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諦めが悪い“一流半”の男たち。
パルマ躍進の中心はカッサーノ!?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2014/03/18 16:30
チームをけん引するカッサーノは、現在11得点でランキング9位。心身のバランスさえ崩れなければ、その才能の輝きは今もなお衰えていない。
ビッグクラブに「捨てられた」男たちの躍進。
チームには、カッサーノ以外のインテル出身組も多い。
MFオビとMFスケロットは、ミラノからレンタルでやってきた。働き盛りのMFガルガーノもインテルでのレンタル生活を終えたと思ったら、保有元のナポリから再び放出の憂き目に遭った。
FWパッラディーノとGKミランテの2人は、今から8年ほど前のユベントスで、いずれも将来を嘱望されていた有望な若手選手だった。'06年のカルチョ・スキャンダル発覚後、彼らは近い将来の継続起用につながると信じて、MFマルキオンニらとともに屈辱の2部シーズンを懸命に戦い抜いたが、復活を急いだユーベは、セリエA昇格を果たすと若手へ居場所を与えなかった。
彼らはジェノバやフィレンツェへ散り散りになり、年月を経てパルマで再会した。ベテランDFモリナーロや重量級FWアマウリも加えると、元ユーベ組は5人を数える。
ビッグクラブでレギュラーポジションをつかみ損ねた彼らは、紆余曲折のキャリアを経て、忸怩たる思いをプレーに込めている。
16戦無敗記録を築き上げる間に、引き分けは7試合あった。スコアレスドロー2試合を除くと、劣勢から追いついて勝ち点1をもぎ取った試合が、15節のインテル戦を含めて4試合もある。
彼らはあきらめが悪いのだ。
100mを10秒3で走る韋駄天、ビアビアニー。
一方で、25歳の韋駄天FWビアビアニーは今、“一流半”の殻を破ろうとしている。
16歳でインテル・ユースにスカウトされた彼は、エリート養成のレールに一度は乗った。'10年12月のクラブW杯に抜擢されると、3-0で勝ったマゼンベ(コンゴ)との決勝戦ではゴールまで決めた。インテルの世界優勝に貢献し、その後もまばゆいキャリアが続くはずだった。
だが、さらにプレー経験を積むために、とサンプドリアへ放出されたビアビアニーはその後、インテルから忘れ去られた。
武者修行中だったモデナ時代の'08年に、ビアビアニーは何気なく測った100m走で、10秒3という驚愕のタイムを出したことがある。
だが恐るべきスプリント能力も、実戦で活かせなければ意味がない。'11年の夏にパルマへ流れ着いたビアビアニーにとって、半年後に就任した監督ドナドーニの指導を受けたことが一大転機になった。