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板、ウェア……冬季は道具が勝負!
頂点を狙える武器を手に入れた日本。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2014/02/07 10:50
スキーなら板やウェア、スケートならエッジなど、冬季競技は道具が勝負の大きなポイントになるものが多い。
夏よりも、冬の五輪は道具の意味合いが大きい。
道具。
夏よりも、冬のオリンピックは道具の持つ意味合いがはるかに大きい。ジャンプの場合は、ウェアが大きなウェイトを占める。
前のシーズンまで、日本のジャンプ勢はウェアの機能面で他国にリードを許している感触があったという。
しかし今シーズンに入ってから、機能、そして最終段階の縫製などで工夫を凝らし、ようやく外国勢とそん色のないウェアが選手に供給されるようになった。
するとどうだろう、今季から成績が向上した。そうなれば、
「ジャンプそのものの技術で劣っていたのではない」
と選手が自信を持ち始めた。
葛西の好調ぶりには、裏付けがあったのだ。
スキー人口の減少が、トップ選手の道具にも影響。
実のところ、ウェアの改良にも、「予算」という問題がつきまとっていた。スキーというレジャー(いまや死語か?)が盛んだった1980年代から1990年代までは、各メーカーがこぞってウェアの開発に取り組んでいた。
人材、予算もつぎ込まれ、必然的にトップ選手たちにも時代に合った良質な道具が提供されていた。「インフラ」が整っていたのだ。
ところが、21世紀に入ってから一般の競技人口の減少が顕著となり、必然的に開発費が削られてしまった。当然のことながら、開発する力も失われていく。
一般スポーツと、オリンピック・スポーツはここで交わるのである。その意味で、オリンピックは国の力を表す場だ。
いまは生地は定められた2社の製品を使うことが義務付けられ、各国は型と縫製で工夫を凝らすしかない。そしてソチを前にして、日本のジャンプ陣は頂点を狙える道具を手に入れた。
さて、結果がどうなるか――。