セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
過密日程に苦しむ本田、カップ戦敗退。
ミランが10番に頼らざるをえない理由。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2014/01/23 12:50
カカは「ベローナ戦ではうまく機能していたのに、今日の試合ではそれが無かった」と試合後に発言。疲労を考慮すると仕方が無かったとはいえ、本田がスタメンで出場していれば……。
逆転を喫し、希望は過密日程の10番に託された。
41分、ウディネーゼのコロンビア代表FWムリエルにPKを決められ同点とされる。カカらは再び攻め直そうとしたが、それまで前線の4人をつないでいた見えない糸は、リードしていた間にすっかり緩んでしまっていた。走れないチームは、前後に間延びした。
途中出場したFWニコラス・ロペスによって、78分に鮮やかなドリブルから逆転弾を叩き込まれると、ミランはいよいよ追い詰められる。
負傷や風邪が相次ぎ、その日のベンチにはユースチームから5人が緊急招集されていた。彼らを除けば、ミランのベンチに攻撃の選手は本田だけ。敗退の危機に、新米監督は背番号10を温存しておくわけにはいかなくなった。
82分、ミランのベンチからブロンドヘアが姿を現した。
12日のデビュー戦からほぼ3日おきにプレーして、4試合目だった。
さすがの本田も体が重く、シュートはバーを越えた。
MFノチェリーノと交代し、2列目中央に入った本田だが、体のキレは鈍い。入って2分後、ボールを獲りにきた相手MFへファウルを犯し、イエローカードをもらった。
ボールを持っても前を向くのが遅く、相手CBの裏を取ろうとペナルティエリア前で待ち構えているカカとロビーニョに気づかない。
ボランチの2人も横パスを繋ぐばかりでロスタイムの5分を使いきる直前、ようやく本田はエリア前のこぼれ球に反応して、左足でダイレクトにゴールを狙った。
ボールがクロスバーを越え、タイムアップの笛を聴くと、本田は右腕で一度顔を拭い、ピッチを後にした。
サンシーロに、1万人のブーイングが吹き荒れていた。
憂い顔のセードルフ監督は、ミックスゾーンでつとめて冷静に話そうとした。
「私がミランに来てからまだわずかだ。望むサッカーを選手たち全員ができるようになるには時間がかかる。前を見て、未来を作り上げていくんだ」
試合終了直後のロッカールームで、指揮官は選手たちに向かってスピーチをしたという。本田はそれをどう受け止めたのだろうか。