プレミアリーグの時間BACK NUMBER
進むルーニー依存と、大物獲得の噂。
マンU香川、最大の課題は「安定感」。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byPress Association/AFLO
posted2014/01/23 10:40
スウォンジーとのリーグ戦、トップ下に回った後半では何度も有効な動きを見せた香川真司。出場機会に恵まれない時期を過ごしながらも、その能力はサビついていない。
最大のライバル、18歳・ヤヌセイの存在感。
但し、半世紀ぶりの公式戦4連敗を免れた一戦で最大の働きを見せたのは、弱冠18歳ながら「決定的」なプレーをするヤヌセイだった。後半のポジション入れ替えも、トップ下で香川を生かすことより、香川が活用し切れずにいた相手右SB後方のスペースをヤヌセイにつかせることが主目的だったと思われる。
実際、香川の頭に届いたクロスは、敵の右サイド深くからヤヌセイが放ったものだ。追加点も、相手GKのロングスローを読んだヤヌセイのボール奪取がきっかけだった。
そう考えれば、続くチェルシー戦でのマンU2列目に、香川ではなくヤヌセイの姿があったのも頷けてしまう。3日後に控えていたリーグカップ準決勝第2レグを睨んでの温存ではなく、香川はチェルシー相手の大一番では頼れないと判断されたと理解しなくてはならない。
マタ移籍は、チェルシーにとっても悪くない選択肢。
ベンチ後方に座る香川に出番を告げることのなかったモイーズは、目の前の戦況を眺めながら、敵の2列目トリオから1人でも引き抜きたい心境だっただろう。
機動力と得点能力を併せ持つエデン・アザール、オスカル、ウィリアンのプレーメイカー3名には、ジョゼ・モウリーニョ監督の下で、前線でのプレッシングと後方へのチェイシングでも貢献する意識が加わった。クラブ伝統の攻撃サッカーに、自身が得意としてきた堅守色を加えたいはずのマンU新監督にとっては、打って付けの2列目要員だ。
獲得の噂が立ったマタは、ベンチスタートを強いているモウリーニョが公言しているように、守備面での貢献度でアザールらに劣る。とはいえ、本来の攻撃面では昨季プレミアで12ゴール12アシストという実績の持ち主だ。
一見すると、それほどの実力者をチェルシーが国内の強豪に売却するとは考えにくいが、商談としては悪くない。噂の金額は、マタのバレンシアからの獲得費用の1.5倍以上。しかも、マンUとのリーグ戦は既に2試合を消化済みで、チェルシーでグループステージに出場したCLでは、移籍先での決勝トーナメント出場が許されないことから、国内外でマタのいるマンUに進路を妨害される心配がない。
むしろ、残るアーセナル、マンC、リバプールとのリーグ戦でポイント獲得に貢献する新戦力となればチェルシーには好都合だ。「マタを売ってあげたのだから」と、昨夏には商談を拒否されたルーニーを来夏に手に入れる一助にさえなるかもしれない。