プレミアリーグの時間BACK NUMBER
進むルーニー依存と、大物獲得の噂。
マンU香川、最大の課題は「安定感」。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byPress Association/AFLO
posted2014/01/23 10:40
スウォンジーとのリーグ戦、トップ下に回った後半では何度も有効な動きを見せた香川真司。出場機会に恵まれない時期を過ごしながらも、その能力はサビついていない。
香川の不遇を嘆いていたファンも徐々に……。
それにしても香川は、プレッシャーが高まる一方の新監督が、最も改善を意識する「不安定さ」を体現してしまっている選手の1人だと言わざるを得ない。
例えば、チームが無敗で上昇傾向を見せた11月には、香川もアピール度アップの兆しを見せたかに思われた。だが、27日のCLレバークーゼン戦(5-0)で大勝の立役者だったはずの日本代表MFは、続く12月1日のトッテナム戦(2-2)で、2ゴールでチームを救ったルーニーとは対照的に精彩を欠いた。
マンUは、同月後半の立ち直りで9位から6位に浮上して昨年を終えたが、年始からは連敗が待ち受けていた。中でも、1月5日のFAカップ第3ラウンドでスウォンジーに敗れると(1-2)、前監督のサー・アレックス・ファーガソンが築いた帝国の「崩壊」が国内各紙で叫ばれた。
同時に、負傷欠場したルーニーの穴を埋められなかった香川に対し、国内の同情票が激減する結果にもなった。メディアの論調は「もったいない」から「起用されなくても無理はない」へと変わり、香川の不遇を嘆いていたファンも、スポーツ専門ラジオ局に「力不足」との意見を寄せるようになった。肝心の指揮官は、香川への信頼を更に低下させたに違いない。
時に見せる「バレエのように魅力的」なプレー。
ビッグクラブ初挑戦のモイーズは、指揮官としての説得力を高めるためにも、喉から手が出るほどタイトルが欲しいはず。FAカップは、国内ではプレミアに次ぐ価値あるタイトルだ。格下のスウォンジーは主力4名を欠いてもいた。その一戦で香川は、約1カ月ぶりに訪れた先発の機会を生かせず、勝利を実現できなかった。
翌週、スウォンジーとのリーグ戦(2-0)で与えられた名誉挽回の機会には、左サイドからトップ下に回った後半、チームのパフォーマンス改善と勝利に貢献した。
後半早々の先制点は、相手GKにセーブを強いた香川のヘディングから生まれている。得点には至らなかったが、ボールを持って右に流れながら、全く足並みを乱さずスルーパスを送った場面などは、英国人記者たちが「バレエのように魅力的」と評する香川の真骨頂でもあった。