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長期政権の後任監督は難しい?
仙台・手倉森誠の理想的な去り方。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO
posted2013/12/27 10:30
J1初年度の苦戦、東日本大震災など、平坦な道ではなかったが、仙台・手倉森元監督は着実に成果を積み上げてきた。リオ五輪でもその手腕に期待が集まる。
マンU、ミラン、ガンバ大阪でも長期政権の後は……。
そうした例はいつでも、どこにでも転がっている。27年もの間指揮を執ったサー・アレックス・ファーガソンが勇退したマンチェスター・Uは、今季からデイビッド・モイーズが監督を務めているが、17節を終えて8位に低迷している。
個人的に印象深いのは、オスカル・タバレスのケース。'91-'92シーズンから5年間ACミランを率いたファビオ・カペッロの後任に指名されたが、のちに母国のウルグアイを南アフリカW杯で4位に導くことになる名将も、シーズン終了を待たずして解任の憂き目に遭っている。
身近な例なら、ガンバ大阪だろう。10年間指揮を執った西野朗氏の後釜としてブラジル人のセホーンを招いたが、3節を終えた時点で解任。その年、クラブはJ2に降格した。
セレッソ大阪も4年半、監督を務めたレヴィー・クルピから昨季、セルジオ・ソアレスへとシフトチェンジしたが、シーズン途中でクルピを呼び戻すことになり、清水エスパルスを6年間率いた長谷川健太氏からチームを引き継いだアフシン・ゴトビも、前体制を上回る成績を残せていない。
5年半に渡ったペトロヴィッチ体制からバトンを受け継いだ森保一監督がサンフレッチェ広島を連覇に導いたのは、フットボールの歴史を見る限り、極めてまれな例なのだ。
今回の指揮官交代は、理想的だったようにも映る。
そこで、仙台である。
'04年からコーチを務めていた手倉森氏が監督に昇格したのは、'08年のこと。その年にJ2で3位になってジュビロ磐田とのJ1・J2入れ替え戦に出場すると、そこでの昇格は逃したが、翌'09年にJ2優勝。'10年はJ1で14位、'11年に4位、'12年は2位と右肩上がりの成長を遂げてきた。
負傷者が続出した今季は13位に沈んだが、クラブ史上初めてアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)を戦った。順位が下がったからといって、“黄金の5年間”が色褪せることはない。
そんな手倉森監督との蜜月が終わるのだから、仙台が来季、クラブとして難しい局面を迎えるのは間違いない。
だが、今回の指揮官交代は、理想的だったようにも映る。クラブにとっても、前監督にとっても、新監督にとっても。