ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
9の名言で振り返る’13年男子ツアー。
「濃い」言葉が、ゴルフの魅力の1つ。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2014/01/02 08:01
2013年の日本男子ゴルフを締めくくったのは、宮里優作。妹の宮里藍と両親が見守るなかで成し遂げた、プロ11年目での悲願の初優勝に会場中が盛り上がった。
日本女子ツアーには2012年度から、シーズン終了後の年間表彰部門に「ベストコメント賞」が設けられた。メディアの投票によって選ばれるこの賞を今年受賞したのは、初の賞金女王となった森田理香子。横峯さくらとのデッドヒートを演じた女王争いの今季最終戦、LPGAツアー選手権リコーカップ3日目のラウンド後の言葉が選出された。
「下を見るのと、上を見るのとは違う。プレーヤーとしては上を見なくてはいけない。明日は1位の人の背中が見えるくらいにいきたい」
1年間の集大成を迎える前日、覚悟を決めた言葉は多くの人の心を揺さぶった。
そこで今回は、シーズン中に選手たちが残してくれたベストコメントで、2013年の日本男子ゴルフ名場面を振り返ってみようと思う。
●4月 尾崎将司 「取り戻すことは出来ないけれど、鍛えることは出来る」
御年66歳。日本ゴルフの生ける伝説がシーズン開幕2戦目で、新たな金字塔を打ち立てた。つるやオープン初日。レギュラーツアー史上初のエージシュートを達成したジャンボ尾崎の言葉だ。
予選落ちと棄権を繰り返しながら、それでも満身創痍の体を突き動かすのは、今も衰えない勝利への執念。だから偉業達成にも「俺はエージシュートを目指してゴルフはしてない。目標はあくまでツアーで勝つこと」と言い切った。黄金時代を支えた肉体にはもう戻れないが、諦められない。プレーの合間に、右手だけでクラブの素振りを繰り返すのはスイングの感覚を鍛えるため。トーナメント会場には誰よりも早く新製品を握って、実戦でトライする尾崎の姿がいまもある。
決して忘れてならないのは、スコアが記録達成に留まらず、62というコースレコードに並ぶものであったこと。片山晋呉は「62って、僕らでも何年に何回出るのよ。それを出すんだから…『敬意を表す』としか言葉はない。『自分も頑張ろう』なんて言える、ヤワなもんじゃないよ」と、ため息をつくばかりだった。今季、ジャンボの決勝ラウンド進出はこの1試合に終わったが、松山英樹の記念すべきプロ初勝利の表彰式で、肩を組んだ2人の姿が思い出に残っている人も多いだろう。