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“強面白かった”馬、オルフェーヴル。
ラストランの有馬記念でサプライズは?
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2013/12/20 10:30
今年の有馬記念までの通算成績は20戦11勝、うちGI5勝。現在のところステイゴールド産駒の出世頭である。
負けたレースでこそ強さを示す、稀有な馬。
そして秋。凱旋門賞に出走したオルフェは、直線で他馬をまとめてかわし、独走態勢に入った。ところが、誰もが圧勝を確信したところで急に内にもたれ、ゴール寸前、外からかわされ2着に敗れた。負けはしたものの、最後方から馬なりで他馬をごぼう抜きにするというとてつもないパフォーマンスは、世界を震撼させるに十分なものだった。
もし、「オルフェのベストレース」というアンケートをとったなら、ダービーや菊花賞など、勝ったレースが選ばれるのだろうが、「オルフェが最も強さを感じさせたレース」となると、この凱旋門賞か阪神大賞典を選ぶ人のほうが多くなるはずだ。
勝って強さを見せつけた名馬はたくさんいたが、負けたレースで自身の強さを、それも世界最強クラスの強さをこうして2度も見せつけた馬を、私はほかに知らない。
一番になって自慢するなら嫌なヤツだが、オルフェはそうではない。そこがこの馬のいいところで、だから、これだけ強くてもアンチファンが少ないのだろう。
とにかく女に弱かった、オルフェーヴル。
そしてもうひとつ。昨年の凱旋門賞でオルフェがかわされたのは牝馬のソレミアで、次走のジャパンカップで競り負けた相手も牝馬のジェンティルドンナ、今年の凱旋門賞で差し届かなかったのも牝馬のトレヴだった。
お気づきの方もいるだろうが、オルフェは「女に弱い」のだ。
2年前の有馬記念では、一騎討ちと言われた女傑ブエナビスタに勝っている。あのとき3歳だったオルフェはまだ女の怖さを知らず、また、ブエナが2歳上の熟女だったから、平気な顔で突き放したのか。
一度は凱旋門賞を勝ったと思わせ、日本中を歓喜の渦に巻き込んだ数秒後に呆然とさせたり、1着より2着で世界を驚かせたり、女に弱かったり……と、これほど「強面白い」馬がかつていただろうか。