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注目はオルフェに再び挑む“あの馬”。
スターホース続々欠場の有馬を読む。 

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片山良三

片山良三Ryozo Katayama

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photograph byYuji Takahashi

posted2013/12/21 08:01

注目はオルフェに再び挑む“あの馬”。スターホース続々欠場の有馬を読む。<Number Web> photograph by Yuji Takahashi

2011年のダービー、神戸新聞杯、菊花賞でオルフェーヴルの2着だったウインバリアシオン(左)。オルフェの背中を追っていた頃を思い出すだろうか?

 ジャパンカップ連覇を果たしたジェンティルドンナが、ファン投票4位の支持をすげなく袖にする形で早々に店仕舞いを宣言。表向きは来春のドバイに照準を絞ったということだが、巨大な勢力を築いた(肥大化した、と言い換えたほうがしっくりくるかも)社台ノーザン軍団が内輪で効率良く駒を回そうとしている印象はどうしても拭えないところだ。

 ジェンティルドンナという大駒が一枚欠けても、そこは年末の大一番、1着賞金2億円の有馬記念である。ドリームレースの名に相応しいキラ星の如き面々が黙っていても揃うと見込まれていたのだが、負の方向に僅かに傾いた流れが連鎖を招くこととなった。

 本番2週前のこと、武豊騎手に自身5度目のダービーの栄光をもたらした、運命の馬キズナが特別登録をしないまま、苦渋の回避の決断を余儀なくされてしまう。「ダービーのときのような状態には到底戻せない」と肩を落として語る佐々木調教師。体調が整わないことが理由では仕方がないが、興行としては計り知れない痛手となった。今秋の凱旋門賞に出走したオルフェーヴルとキズナの新旧ダービー馬2頭が、ニッポンのグランプリで再戦! という呼び物のストーリーがこの時点で崩壊してしまったからだ。売り上げベースで100億円以上は違う、大スターの不参戦というバッドニュースだった。

レース3日前、渾身の仕上げのエイシンフラッシュも引退。

 悪い流れはさらに続いた。全馬の追い切りも滞りなく済み、あとは出馬投票をして枠順も決まるというレース3日前の木曜日の朝、ファン投票5位のエイシンフラッシュが出走を断念したのだ。理由は右前脚の球節捻挫。記者会見に臨んだ藤原英調教師は、この人のイメージには似合わない涙を見せて、無念さとこれまでの同馬の活躍に対する感謝の気持ちを絞り出した。有馬記念翌日に引退式が予定されていただけに、陣営としてはまさに渾身の仕上げ。それが逆の目に出てしまうのだから、繊細な競走馬をビッグレースに出走させることの難しさが伝わってくる。

 ちなみに、この直前の回避で次点だったテイエムイナズマに最後の議席が回ってきた。管理する福島調教師は「勝負事だからなにが起こるかわからない。準備は怠りなくしてきたよ」と慌てず騒がず。石橋騎手で出馬投票を行ない、特別登録料の返還(除外になった場合のみ、そういう措置がとられる)手続きをするつもりだったようだが、出られるとなったら当然のことながら話は変わる。

 エイシンフラッシュに騎乗する予定だったミルコ・デムーロ騎手に素早くチェンジして、幸運を結果につなげるべく、最善の努力を投票用紙に込めた。フラッシュ(閃光)からイナズマ(稲妻)。馬名の意味からするとパワーアップしているじゃないか、という外野の声も聞こえる。ファン投票ではランキングから遠く外れた馬だが、そのシチュエーションからにわかに不気味さが漂ってきた。

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