1戦必勝の戦いが、徐々にチームを蝕んでいく。

　1番を務める根元俊一が出塁し、3番・井口資仁と4番・今江敏晃が決定打を放つ。熾烈な外野手争いの中、「打」の角中勝也、「守」の岡田幸文、「走」の荻野貴司とそれぞれが特長を生かせるよう、適材適所での起用も光った。

　7月に西武と入れ替わって調子を落としたものの、8月にまた粘り、楽天に次ぐ2位に再浮上した。

　ところが、シーズン序盤からの1戦必勝の戦いは、やがてチームの歪みとなって表れていく。

　それが“故障トラブル”だった。

　前半戦を引っ張った西野が右肩を故障。復帰後も調子が上がらずに、9月6日になって再び登録を抹消された。同5日のオリックス戦では今江が足首を負傷、同7日に登録を抹消された。

　今江は10日間で復帰したものの、このあとも故障者は続いた。

　極めつけは9月26日の日本ハム戦。

　この日は楽天が優勝を決めた日だが、首位を追うべきはずのチームにもかかわらず、今江、井口、角中、里崎智也がそれぞれ故障を訴えて先発から外れたのだ。このうち、角中と里崎は翌日に抹消されている。

　さらには、9月29日の西武との試合で、9回表1点ビハインドの2死走者なしから四球で出塁し、盗塁、送球ミスの間に同点ホームを踏むという「足」の脅威を見せつけた荻野が、翌30日の日本ハム戦で右太もも肉離れを起こし、全治3週間の故障を負った。

主力の復帰で、西武は4位から反撃を開始する。

　一方の西武は、9月に入って息を吹き返しつつあった。

　9月に入った時点では4位、CS進出は絶望的と思われたが、中村、片岡治大の復帰から徐々に、戦力がそろいつつあった。

　なかでも、「打」では片岡、「投」では救援を務めた野上、高橋朋己、涌井秀章の3人の貢献度が大きかった。

　近年故障の多かった片岡は、今シーズンの序盤こそ打撃の面での活躍はあったが、どこか彼らしさが影を潜めていた。ところが、9月の復帰以降は、明らかに身体のキレが違っていた。西武が日本一に輝いた2008年を想い起こさせるプレーでチームを引っ張る。西武ファンに絶大な人気を誇る片岡の完全復活は、チームを、本拠地の西武ドームを一つにさせた。

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