野球善哉BACK NUMBER
戦力充実の西武と捨て身のロッテ。
渡辺・伊東両監督のCS頭脳戦開始!
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/10/11 13:15
現役時代は14度のリーグ優勝、8度の日本一を経験。現役引退後、監督としても西武を日本一に導くなど、伊東勤監督は短期決戦を知り尽くしている。
渡辺監督がブルペンを整備し、勝ちパターンを確立。
投手陣の台所事情は苦しかったが、渡辺久信監督が上手く整備したといえるだろう。
先発として結果の出なかった涌井を救援に回し、9月末からストッパーのサファテと入れ替えた。野上とルーキーの増田達至の役割を逆転させ、もうひとりのルーキー左腕・高橋を積極起用した。高橋は左腕から独特の腕の振りで、ソフトバンクの長谷川勇也らパ・リーグの強打者たちをきりきり舞いに。ほとんどの打者がストレートにタイミングが合っていなかったのが印象的だった。ストッパーになってよみがえった涌井は、10連投をものともせず試合を締めた。
西武の5月からの戦いでは勝ちパターンと負けパターンがはっきりしていたが、この時期にきて救援陣が安定したことで、ようやく負けパターンを勝ちに転化することに成功していたのだ。
その結果が、8連勝でシーズンを2位で締めくくったという事実だ。
ロッテ、ソフトバンク、楽天という上位を倒しての連勝は、ベストメンバーが揃った西武の強さが驚異的だということを見せつけるものだった。筆者は西武のCS進出の可能性は低いと考えていたが、予想をはるかに超える西武の威勢には恐れいった。
「何が起こるか分からん」キャプテンはそう言い続けた。
今になって思い返すと、キャプテンの栗山巧が「何が起こるか分からん」と言い続けた姿勢が印象に残っている。
9月8日のロッテ戦。試合前のことだった。
雨のため、この日はノーゲームになったのだが、調子を落としつつあり、諦めムードの言葉を記者にこぼしていた秋山翔吾に、栗山がこう声を掛けたのだ。
「なに弱気なことを言うとんや。こっからは何が起こるか分からんよ。10打数10安打とか、平気であり得るからな。まだまだこれからや」
10打数10安打という言葉があまりにも大きすぎ、冗談に聞こえなくもなかったが、キャプテンは本気だった。栗山は、そう口にすることで、自身を奮い立たせていたのかもしれない。
シーズン序盤から栗山、浅村栄斗、秋山、ヘルマンで支えてきた打線に、片岡、中村、坂田が復帰し、厚みを増した。守備面は、遊撃手の鬼崎裕司、捕手の炭谷銀仁朗を中心にしっかり整備され固め、配置転換によって救援陣も機能するようになった。
両者のコンディショニングの差は、シーズン最終戦に明らかになっていた。