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衰えたジーターに3年51億円は妥当?
ヤンキースの財布を傷める終身雇用。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2010/12/13 10:30
ニューヨーカーだけでなく全米で絶大な人気を誇るジーター。オールジャンルのスポーツマン人気投票でも常に5本指に入る。殿堂入り、永久欠番もほぼ確定している晩年を迎えた選手は……やはり扱いが難しい
ジーターが突きつけた条件は不当なものだったか?
ジーターと同じく、FA権を取得したリベラの場合はヤンキースと2年間で約30億円の契約を結んだが、この内容はこれまでの3年45億円と単年あたりの年俸額は同じ。リベラは年俸に見合う働きをしているとはいえ、やはり簡単には値切れないのだ(この契約が満了を迎える2012年にリベラは引退すると見られる)。
ジーターのケースは実際に難航した。衰えの見える遊撃手にヤンキースはどれほどのオファーを出すのか? ということが注目されていたが、当初、ヤンキースは3年間で45億円の契約を申し出たと伝えられ、「4年目のオプションはなし、嫌ならばFAのマーケットを試してみれば……」という基本方針だったという。
ジーター側の最初の思惑は、5年、もしくは6年契約、1年あたりの年俸は22~24億円程度だったと報道されている。
両者の隔たりは大きく、しかもフリーエージェント市場で自分の本当の「値段」を知るがいいというヤンキース側の態度にジーターは怒り心頭だったという。なぜならジーターは他のチームに行くことは考えておらず、チームに忠誠心を持っていたからだ。
結局、ヤンキースとジーターは3年間約51億円、4年目に関してはジーターにオプションが与えられ、これが8億円となった。
ジーターの2010年の成績をもとにして考えた場合、この契約は著しく高い。しかしヤンキースに選択肢はなかった。
終身雇用制のジレンマは、球団の財布に影響を及ぼす。でも……ヤンキースなら、大丈夫か?