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衰えたジーターに3年51億円は妥当?
ヤンキースの財布を傷める終身雇用。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2010/12/13 10:30
ニューヨーカーだけでなく全米で絶大な人気を誇るジーター。オールジャンルのスポーツマン人気投票でも常に5本指に入る。殿堂入り、永久欠番もほぼ確定している晩年を迎えた選手は……やはり扱いが難しい
ジーターがいないヤンキースは、やっぱりヤンキースじゃない。
今年のストーブリーグの最大の注目は、クリフ・リーがどのチームと契約するかということにあるが、ヤンキース・ファンはジーターとヤンキースの再契約交渉が滞りなく進むことを祈っていた。
交渉の結果、少なくとも2013年までジーターはヤンキースでプレーすることになった。しかし会見では、交渉の進捗状況が報道されたことに不快感を示した。スマートなジーターにしては珍しいリアクションだった。交渉が決して、和やかなものではなかったことが想像された。
実力を取るか、ブランド優先か……ヤンキースのジレンマ。
2010年のシーズンが終わり、ジーターとヤンキースの10年間、約189億円(過去数年の為替変動を鑑みて1ドル=100円にて計算。以下同様)に及ぶ契約が満了した。この間、ワールドシリーズ制覇は1回だけだったが、ジーターはヤンキースの主将としての重責を十分に果たしたと言えるだろう。
ジーターとしてはフリーエージェントになったとは言っても、他の球団に移籍する選択肢は現実的にはなかった。彼は入団した最初の日から、「キャリアをヤンキースで終えたい」と話し、それを実現しようと奮闘していると言ってもいいからだ。
難しかったのは、球団側の対応である。
ヤンキースとすればルー・ゲーリッグ以来ともいわれる「ヤンキースの顔」を手放すわけにはいかない。そんなことをすればファンもメディアも黙っていない。つまり、球団のブランドに傷がついてしまう。
ヤンキース側のジレンマは、ジーターが選手としてのピークをすでに過ぎている……そう判断されることだった。
ジーターは36歳。メジャーリーグでは選手のピークは20代後半から30代前半までと見なされており、ジーターの全盛期は過去のものという見方が一般的である(メジャーでは最初のFA権を獲得するのがちょうどこの年齢となる。日本では大卒の選手だと峠を越してからFAとなることが多い)。