スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
スペイン代表の正FW候補が登場!
“問題児”ジエゴ・コスタの覚醒。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byGetty Images
posted2013/10/01 07:00
マドリッドダービーでセルヒオ・ラモスと競り合う。腕には大きな入れ墨が踊り、挑発的なプレーを繰り返したディエゴ・コスタを観客は何度も批判した。「ディエゴ・コスタはスペイン人ではない!」とのコールも。
エリート揃いのスペイン代表に馴染めるのか。
それは大衆の意見にも表れている。スポーツ紙がウェブサイトで行ったアンケートでは、ジエゴを次回の代表戦に招集すべきとの回答がマルカ紙で67%、アス紙で71%にも上っていた。
素行の問題に加え、そのプレーが“ラ・ロハ(スペイン代表の愛称)”のポゼッションスタイルにはまるかどうかも未知数である。ただ、それでも一度見てみたい。これらの反応からは、そんな人々の期待感が見て取れる。
16歳までチームには属さずストリートで技を磨き、ポルトガルで初のプロ契約を結び、スペインで成り上がったブラジル人FW。
世界最高の育成組織で英才教育を受けてきたバルサ勢が中核を占める現在のスペイン代表に、出自も、経歴も、性格も、プレースタイルも異なるジエゴは融合し得るのか。
その結果がどうであれ、いつしか勝ち慣れた優等生集団に物足りなさを感じはじめた贅沢な国民にとっては、異物の混入という行為自体に刺激や魅力を感じているのかもしれない。
高まる人々の期待を尻目に、ジエゴ本人は冷静に現実を見つめている。
「スコラーリはメンバーを固定したチームで戦っているし、スペインの主力も固まっている。呼ばれたこともない選手が入っていくのは難しいよ。ネグレド、ソルダード、ビジャといったレベルのストライカーがいるならなおさらだ」
だが彼は、こうも言っている。
「まだスペインからは何も言われていない。噂を耳にするだけだけど、希望は捨てていない。ブラジルとスペイン、どちらかを選べる立場になった時には、自分が望む方を選ぶよ」
今の活躍を続けていれば、スコラーリからも声がかかる可能性は十分にある。本当に2つの代表を選べる立場になった際、はたして彼はどちらを選ぶだろうか。
それは彼の今後のキャリアを左右するだけでなく、来年のワールドカップで優勝を目指す2カ国の命運を分ける決断となるかもしれない。