フットボール“新語録”BACK NUMBER
日本人の年間最多ゴールを超えるか。
久保裕也、スイスで得点力が覚醒中。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2013/08/23 10:30
高校生時代にA代表に招集された逸材の才能が、スイスで花開きつつある。物怖じしない性格も、欧州でのブレイクを予感させる。
「今季、メッシくらいゴールを取ってやろうと思ってます」
久保裕也(BSCヤングボーイズ)
日本人選手の欧州における年間最多ゴールは、香川真司が2011-2012シーズンにドルトムントで決めた17得点(ブンデスリーガ13+CL1+ドイツ杯3)だ。
もしかしたらその記録を塗り替えるかもしれない19歳のFWが、スイスに現れた。今年7月、J2の京都サンガからスイス1部のBSCヤングボーイズに移籍した久保裕也だ。
久保は主にトップ下で出場し、スイスリーグの第5節時点で3ゴール。スイス杯の1回戦では1トップで出場して1ゴールを決め、6試合で4ゴールというハイペースで得点を重ねている。スイスリーグは36節まであり、このペースなら20点越えも夢ではない。ヤングボーイズは久保の活躍もあって、5連勝で首位を独走している。
スイスリーグはブンデスリーガやセリエAへのステップアップの舞台になっており、決してレベルは低くない。たとえばスイス代表のシャキリは、バーゼルでの活躍が認められて昨季バイエルンに引き抜かれ、サブのFWとしてCL優勝に貢献した。シャキリのリーグ年間最多得点は5点。スイスリーグで得点を量産するのは簡単なことではない。
「今は自分でも、点を取れそうなニオイがしています」
いったいスイスで何が起こっているのか?
久保が初先発したアーラウ対ヤングボーイズ(8月10日)の4日後、スタジアム横の練習場を訪れると、久保は生き生きとした表情で語った。
「トップ下って初めてやるんですよ。だから自分としては、まだ慣れない部分がある。でもまあ、うまくはやれていると思う。今は自分でも、点を取れそうなニオイがすごくしています」
ヤングボーイズのシステムは4-2-3-1で、すでに書いたように久保の主戦場はトップ下だ。京都でFWとしてプレーしていた久保にとって、新たな挑戦だ。2012年2月に初招集された日本代表の練習でも、与えられたのは1トップだった。