ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
「自分のプレー」から「背負う者」へ。
勝負の今季を前に変わった清武弘嗣。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2013/08/22 10:30
志願して直接FKを蹴り、見事同点ゴールを決めた清武。ブンデス2年目、もはや遠慮をする時期は終わったのだ。
ヨーロッパの主要リーグの中で、いち早く開幕したブンデスリーガ。すでに2試合を終えている。細貝萌のいるヘルタ・ベルリンと戦い、ホームで敗色濃厚だったニュルンベルクを救ったのが、清武弘嗣だった。
後半44分、フリーキックを自ら直接決めたのだ。
「蹴る前にマイキ(チームメイトのフランツ)に『キーパーは絶対に壁の上を警戒している。逆を狙え』って言われたんで、逆狙いました。なんでああいうふうに言ってくれたかはよく分かんないですけど、あれが当たって……という感じです」
そう語った清武がFKから直接ゴールを決めたのは、意外にもニュルンベルクに来てから初めてのことだ。昨シーズンはセットプレーから多くのゴールをアシストしたものの、「自分はもともとキッカーではないから」と話していたし、直接ゴールを決める位置で得たフリーキックを周囲の選手に譲ることも少なくなかった。
それでもこの日は違ったという。
「エスィー(エッスバイン)が蹴るか迷ってたんですけど、自分から蹴りました」
ただ、そう短く話したあとにこう続けた。
「でも、フリーキックのゴールよりもゲームの内容を重視したほうがいい。ゴール前に行くシーンが少なかったし、結構ヘルタがスペースを空けてたと思うんですけど、そのスペースを上手く使えなかったし」
ゴールを決めた喜びに浸ることなく、反省を口にしていく、その裏には今シーズンにかける想いがある。
俺は蹴りたかったから『一番に蹴る』って。
実は、似たようなことがリーグ戦の開幕前にもあった。開幕の前の週に行なわれたドイツカップのザントハウゼン戦だ。同点のままPK戦にもつれこむと、ニュルンベルクの選手たちが次々とキッカーになることを拒んだため、なかなかPK戦が始まらなかったのだ。実際、PK戦の末にチームは格下相手に敗れることになってしまった。そんな中で、1番目のキッカーに志願し、決めて見せたのが、清武だった。自分はプレースキッカーではないと自認するものの、この日は迷うことなかった。その理由をこんな風に明かしている。
「俺は蹴りたかったから、『一番に蹴る』って言って。ああいうのは自分で蹴りに行った方がいい。PKってのは気持ちやと思うし。ラストは気持ちで負けたんじゃないですかね。あとは、自分から蹴りにいくっていう選手が多くいないとこのチームはダメだと思うし。もう、たぶん、蹴る前から勝敗決まってたんじゃないですかね」