フットボール“新語録”BACK NUMBER
日本人の年間最多ゴールを超えるか。
久保裕也、スイスで得点力が覚醒中。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2013/08/23 10:30
高校生時代にA代表に招集された逸材の才能が、スイスで花開きつつある。物怖じしない性格も、欧州でのブレイクを予感させる。
あえてたとえるなら、ドルトムント時代の香川のよう。
だが、未経験のポジションを、すでに久保は自分のものにしている。
大きかったのは、京都時代、大木武監督が志向する狭いエリアでのサッカーに慣れていたことだった。
「ヤングボーイズのサッカーは、自分がいたチーム(京都)とは全然サッカーが違うんですよ。(京都は)片方のサイドに寄るサッカーで、ずっと狭い中でやっていた。それが一気に広くなって、割と自分のまわりにスペースがある感じがする。こっちは1対1がすごく強いし、苦労する部分はありますけど、スペースがあるので僕はやりやすいです」
久保のトップ下におけるプレーの特徴は、動きが止まらないことだ。
パスコースに顔を出し、たとえパスが来なくても、すぐに動き直して他のコースに曲線的なステップワークで移動する。そしてパスを受けると、スピードを生かしたドリブルで勝負し、決定機を生み出そうとする。
アーラウ戦の先制点は、久保が中盤でパスを受けてドリブルを仕掛け、そのこぼれ球から生まれたものだった。
あえてたとえるなら、ドルトムント時代の香川真司のようなプレー。突出したトラップの精度とスピードで、まわりを置き去りにできる。
香川と違うのは、パワー勝負にもこだわるところ。
だが、久保はやはりFWだ。
香川とひとつ違うのは、背中から強く当たられても意地になって踏ん張り、パワー面でも相手に勝とうとすることだ。
「監督にフィジカルが弱いって言われているので、そういうところでもやれるっていうのを見せたい。フィジカルでも勝負していきたいっていうのはあります」
身長178cmは、欧州のストライカーとしては決して大きくない。ただし、2009年から2年連続でスイスリーグの得点王に輝いたドゥンビア(現CSKAモスクワ)も同じ身長だ。ドゥンビアはJ2の徳島ヴォルティスからヤングボーイズに移籍してブレイク。その後ロシアリーグでも得点王になり、コートジボワールを代表するストライカーになった。
J2からヤングボーイズで飛躍を遂げる――。ブリック紙は久保を「第2のドゥンビア」と名付けた。