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首位・楽天相手に2試合連続サヨナラ。
打ち勝つ野球で、西武はまだ死なず!
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/08/20 12:35
8月18日の楽天戦でサヨナラタイムリーを放った栗山巧(右から2人目)。プロ入り12年目で今年30歳になるが、握力は80kgを誇るという。
田中に21連勝を許した翌日から、2戦連続のサヨナラ劇。
7月が終った時点では2位だった。首位・楽天とのゲーム差は5。優勝圏内をキープしていた。ところが8月に入ると、追撃ムードは突如として暗転してしまう。
チームトップの9勝、防御率も1.92とエース級の働きを見せていた菊池雄星が左肩痛を訴え、7日に戦線を離脱。主戦の穴埋めを期待されたかつてのエース、涌井秀章も8月13日のソフトバンク戦で4回5失点KOと炎上した。
その火種は、同カード3連戦で計33失点と投手陣の崩壊を招き、チームはたった半月で4位に転落。さらに16日の楽天戦では、田中将大にプロ野球記録となる21連勝を許し自力優勝の可能性も失った。
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事実だけを受け止めれば、獅子の牙は抜かれたかに思えたが――。
否。それどころか、鋭く磨かれていたのだ。
獅子奮迅。楽天に牙を剥いた試合こそ、翌17日からの2戦だった。
17日は、勝利目前の9回2死から一発を浴び同点とされたものの、その裏に4番・浅村栄斗が二塁打を放ちチャンスメイクすると、2死一、二塁から代打・大崎のサヨナラ打で勝利を呼び込んだ。その勢いは翌日、敗色濃厚だった展開を覆しての2試合連続のドラマチックな幕切れへと結実した。
栗山が「勝つためには打つしかない」と言っていたように、今の西武には繋ぎの意識がより浸透している。
勝負強い栗山、浅村、秋山のクリーンナップで打ち勝つ。
体力の消耗が激しい夏場は投手にとって厄介な時期だ。渡辺監督自身、「夏はピッチャーが持ちこたえられないゲームもある」と言っているように、ある程度の打撃戦は視野に入れている。だからこそ、指揮官はミーティングでこう選手たちを鼓舞するのだ。
「クリーンナップに繋ぐ意識を持って打席に立ってほしい」
打ち込まれる場面が目立つ投手陣と違い、最近の打撃陣は調子がいい。
昨年10月に左ひざを手術し、今も二軍でリハビリ中の絶対的な主砲・中村剛也が打線に名を連ねていないのは確かに痛い。それでも、浅村が打点王をひた走るなど4番の重責をしっかりと果たし、脇を固める3番・栗山、5番・秋山翔吾を含めた中軸3人全員が、得点圏打率3割越えと勝負強さを発揮している。
クリーンナップという安定した得点源があるからこそ打ち勝つ野球ができる。2試合連続サヨナラ勝利の背景には、そのような理由があったわけだ。