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続『マネー・ボール』の主役は日本人!?
岩隈と松井秀がアスレチックスを救う。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2010/11/16 10:30
アスレチックスのGMにして副社長のビリー・ビーン(左)と監督のボブ・ゲレンがクラブハウスで談笑
ジャイアンツの優勝がアスレチックスを追い込んだ!?
Game Change.
アスレチックスによってゲームのルールは変わった。
そして、『マネー・ボール』で培ったノウハウは今や時代遅れになり、新しいルールを編み出していく必要に迫られた。
岩隈の獲得だけでなく、ロイヤルズから1番打者のデヘズースをトレードで獲得したり、急務となっている外野手と指名打者の補強のため、フリーエージェント(FA)戦線にも乗り込んできそうな勢いである。
獲得を考えている選手には、ジェイソン・ワース、アダム・ダン、そして松井秀喜の名前も挙がっている。
ワースなど、1年で10億円以上の案件である。そんな高額選手の獲得を考えるなど、数年前のアスレチックスではあり得なかった。
それはなぜか?
本拠地がらみでアスレチックスが抱える複雑な事情。
ひとつの理由として、サンフランシスコ湾を挟んですぐ対岸に位置しているジャイアンツがワールドシリーズで優勝したことが大きいのではないか、という見方がある。
同じエリアにフランチャイズを持つチームは、必然的にマーケットシェアを奪いあうだけでなく、プライドの面でも激突する。
アメリカのスポーツでは「良き隣人」たることは不可能である。相手を憎み、やっつけるしかないのだ(もし、あなたがニューヨークで「ヤンキースとメッツの両方を応援しています!」と笑顔で答えたら、理解できないというまなざしで見られることを覚悟した方がいい)。
ところがアスレチックスの場合はさらに事情が複雑で、サンフランシスコからもオークランドからも至近なサンノゼに新球場を建設した上で、2015年には本拠地を移転することを目論んでいるのである(ただし、それにはジャイアンツの許可が必要という微妙な立場にある)。だから、その時に備えてチームの価値を上げておきたい。
それには成績を残すのが一番なのだ。