オフサイド・トリップBACK NUMBER
チームメイトがあのベッカム!?
レスター・阿部勇樹の正念場。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byGetty Images
posted2010/11/15 10:30
レギュラー定着から躍進へ! 本格化する阿部の挑戦。
加えて阿部の場合は、生真面目で温厚な人柄も受けがいい。阿部は9月末に行われた地元の交流イベントで、次のように発言をしたとも報じられている。
「僕は自分のことを、卵から出てきたばかりで、周囲の世界を歩きながら初めて見ている小さなヒヨコのように感じている。自分はまだ(新しい環境に)慣れようとしている段階だし、クラブや監督、チームや練習の仕方というものを把握しようとしている途中だ。きちんと落ち着ちつくことができれば、将来的に自分のパフォーマンスはもっと上げていくことができると思う」
慣れない英語に苦労しながらも、身振り手振りも交えて必死に同僚とコミュニケーションを取ってチームを勝利に導こうとする姿。ファン向けのイベントなどにも快く参加し、積極的に地域に溶け込こんでいこうとする姿勢。サポーターが阿部にシンパシーを覚えるのは当然だろう。
阿部は日本にいた頃から、もっとも好感が持てる選手の一人だった。ミックスゾーンでは素朴ともいえる口調で誠実に質問に答えるし、試合が不本意な結果に終わったときにも、嫌な顔一つせずに最後の最後まで記者団につきあってくれる。選手として一流であることは言うまでもない。
そんな好漢であればこそ、阿部には是非ともこの荒波を乗り切ってほしい。監督交代や選手補強によるレギュラー争いの激化といった試練を乗り越え、レスターとイングランドに定着したとき、日本サッカー界はまた一つ、貴重な財産を手にすることになる。