野球善哉BACK NUMBER
オリックスを去った名コーチを想う……。
藤井康雄がソフトバンクを変える!?
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/11/10 13:30
「(秋山)監督を男にしたい」という気持ちを探りに。
そうした藤井氏の功績がチーム内でどのように評価されていたのかは分からないが、昨年には二軍の打撃コーチの座から再び降りている。スカウトとしての能力にも突出したものがあったことは事実だが、人間的な魅力とその手腕を考えれば、常に彼にはユニフォームを着ていて欲しいもの、とそれから何度も思った。
そんな藤井氏が、この秋ソフトバンクの一軍打撃コーチとして再びユニフォームを着ることとなった。
就任会見では「(秋山)監督を男にしたい」と話していたが、いったい彼の心中はいかなるものだったのか。
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その疑問を解きたくて、すぐに秋季キャンプに行った。
藤井氏はなぜオリックスを離れたのか。宮崎県・生目の杜運動公園のソフトバンクのキャンプで、熱心に指導している彼に会った。
「見た顔に会えるのは嬉しいね」
そう言って右手を差し出してくれた藤井氏とは、スカウト時代の'08年に初めて名刺を交換した。その後コーチも務めるわけだが、その時もスカウト時代と変わらず温かく接してくれた。昨年秋から再びスカウトに転身、ちょうど1年前の明治神宮大会で顔を合わせた時には「また、よろしくねぇ」と声を掛けてくれたことを今でも忘れられない。
「その成長を見ているのがたまらんのよねぇ」
「スカウトっていう仕事は選手と接することが少ないから、選手の表情が分からないんだよねぇ。こうやってコーチとして指導をしていると、日々変わっていく選手を見ていられる。“良くなったなぁ”と感じながら選手と接して、その成長を見ているのがたまらんのよねぇ」
コーチの醍醐味は何かと聞くと、そう返って来た。
「秋山監督の方から、やってくれないかと声をかけてもらってね。(オリックスを出るのは)覚悟を持ってのことだけど、待っていられないというのもあったから。ソフトバンクのために、今はそのことしか考えていないよ」
藤井氏の指導で気になるのはT-岡田を一人前にしたように、自身の理論をソフトバンクにも浸透させていくつもりなのだろうかということだ。