MLB東奔西走BACK NUMBER
現役続行か? MLBから永久追放か?
薬禍の主役、Aロッドの運命やいかに。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2013/08/09 10:31
ホワイトソックス戦前に、ファンにサインをするAロッド。子どもたちの信頼と期待を裏切る結果にならなければいいのだが……。
Aロッド以外の告発された12選手は処分を受け入れた。
今回のアピールで禁止薬物を使用していないことを証明したいというのなら、それは100%不可能に近い。
騒動の発端となったのは、今年1月にマイアミの地元紙が、同地区にあるアンチエイジング専門クリニック『バイオジェネシス』を通じて複数のMLB選手が禁止薬物を不正入手していると報じたことだった。
その当時、報道に名前の挙がっていた選手たちはことごとく禁止薬物の使用を全面否定していたが、結局彼らはMLBの調査を受けた後に使用を認め、50試合の出場停止処分を受け入れているのだ。この結果が、MLBが調査した証拠資料は薬物使用を十分に立証できるものであるということを裏づけている。
そのMLBが、処分に関する声明で、ロドリゲスが複数年に渡り複数の禁止薬物を使用し、さらにMLBの調査を妨害しようとする行為を行ったとしているのだ。いくら優秀な弁護士を雇い入れようとも、薬物を使用していないと言い逃れることはできるものではない。
選手会の事務局長は“前科持ち”のAロッドを擁護する。
そもそもロドリゲスには薬物使用の前科がある。
2009年に『スポーツ・イラストレイテッド』誌が2003年の薬物検査で陽性反応が出たMLB選手が104人おり、そこにロドリゲスが含まれていたと報じ騒動となった。そしてロドリゲスはレンジャーズ時代の2001年から2003年にかけてのステロイドの使用を認める謝罪会見を開いたのだ(現行の禁止薬物規則が2004年から施行されていたことで、その規則制定の前に使用していたということで当時は処罰されなかった)。その後のヤンキース時代でも禁止薬物使用を疑われるような報道が相次ぎ、バリー・ボンズやロジャー・クレメンスらが球界を去った後、未だにMLBに巣喰う“ステロイド時代の象徴”的な存在であり続けた。だからこそ薬物違反で初の処分でありながら211試合出場停止という過酷な処分が言い渡されたわけだ。
しかし処分が発表された直後に選手会のマイケル・ウェイナー専務理事はロドリゲス支持を表明し、ラジオ番組に出演してMLBのコミッショナーであるバド・セリグ批判を行った。
「今回の決定は不適当であり、馬鹿げたものだ。これまで選手会協力のもとMLBが下した処分と比べても、211試合はあまりにかけ離れている。重い処分を支持するたくさんの選手がいる一方で、行き過ぎだと考えている選手も少なくない」