MLB東奔西走BACK NUMBER
現役続行か? MLBから永久追放か?
薬禍の主役、Aロッドの運命やいかに。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2013/08/09 10:31
ホワイトソックス戦前に、ファンにサインをするAロッド。子どもたちの信頼と期待を裏切る結果にならなければいいのだが……。
日本でも大々的に報じられている、MLBによる禁止薬物使用騒動の処分が、新たな局面を迎えた。
最も重い211試合の出場停止処分を通告されていたアレックス・ロドリゲス選手が、処分が執行される8月8日を待たずに前日の8月7日に、予定通りではあるが選手会を通じてMLBに対し正式にアピール(異議申し立て)を行った。これにより今後は仲裁者が証拠を精査しながら処分が妥当かどうかを審議することになるわけだが、すでに米国メディアが報じているところでは、今回は膨大な証拠資料が揃っているため通常30日間程度で終わる審議も長期化することが必至で、現時点で結論は11月もしくは12月になる見通しという。結論が出るまで出場が許されることになるロドリゲスは、結局今シーズンすべてでプレーできることになったわけだ。
事態はまさに泥仕合の様相を呈してきた。
「なぜ彼が現役に固執しているかが理解できてない。個人記録なのか? それとも金か? ただ言えることはこのままアピールの結論が出るまでプレーを続けるということは、とてつもない悲劇が待ち受けているということだ」
これはある人気野球アナリストの意見。
奇しくも処分が発表された8月5日、今季初出場となったホワイトソックス戦でロドリゲスがファンから強烈なブーイングを浴びたことでもわかるように、現時点で彼を擁護したいと考えるファンはほぼ皆無といっていいだろう。
認めるも地獄、否定するも地獄──Aロッドを待つ茨の道。
もちろんヤンキース・ファンの中には、ここまで深刻な打撃不振に喘ぐチーム状況を考えればロドリゲスの復帰を歓迎する人々もいるだろう。それにしたところで今後彼がファンの期待通りに活躍することが最低条件となってくる。そうでなければヤンキース・ファンとて見捨てることになるだろう。
それはヤンキース自体も同じ考えだ――とする先ほどとは別の野球アナリストの意見もある。
「彼が復帰会見で話している通り、とにかくチームを納得させる活躍をしなければならない。もし彼が今後不振続きで、production(この場合は得点を生み出す能力という意味)よりdistraction(チームにもたらす狂乱、混乱)が上回るようなことになれば、チームは彼に三行半を突きつけるだろう」
いずれにせよ今後ロドリゲスを待ち受けているのは茨の道以外に何もない。
長年MLB最高年俸選手だったことを考えれば、このまま処分を受け入れ引退したとしても、残りの人生を優雅に暮らせる十分な生活基盤は確立しているだろう。別に自ら進んで人々の誹謗中傷を浴び続ける必要は微塵もないはずだ。
現役に続行する道を選んだことで、そもそもロドリゲスは何と戦おうとしているかが疑問となってくる。