詳説日本野球研究BACK NUMBER
今季ドラフトは“斎藤・澤村世代”だ!
中大エース・澤村拓一という逸材。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/10/08 10:30
10月1日の国士舘大戦、澤村はストレートの最速156キロをマークし、被安打8で亜大戦に続き2試合連続完封を飾る
高校時代は凄さと脆さが同居していた澤村。
その当時のノートに記入された澤村の評価には、2番目に良い評価を表す記号が書かれていた。それほど高い評価にもかかわらず、澤村はこの試合、1回ももたず、0回3分の2でノックアウトされている(これほど早いKO劇なので、ノートに記述した寸評のほとんどはピッチング練習中のものである)。
ノートの最後には「素質は文句なし。課題は変化球のコントロールとストレートの内角投げ」と書かれている。
高校時代の姿を延々と書いたのは、澤村本人や高橋善正・中大監督が取材するたびに「高校時代は大したことがなかった」と言うからである。澤村と同様の評価か、それ以上となる最高点をつけたのは、前記15人のうち、村中、細谷、高浜、片山、前田、岡田、中田、平田の8人しかいない。それほど素質のよさには見るべきものがあった反面、結果は無残にも打者2人を打ち取っただけでノックアウトされている。3年になってもこの印象は変わらない。凄さと脆さが同居する本格派――高校時代の澤村拓一はそんな投手だった。
中大入学後、投球フォームが安定し急成長を遂げる!
中大入学後の成績は次のとおりである。
1年春(2部3位) 4勝1敗、防御率2.29
秋(2部3位) 1勝0敗、防御率4.32
2年春(2部1位) 2勝1敗、防御率2.77
秋(1部3位) 3勝2敗、防御率1.50
3年春(1部4位) 3勝3敗、防御率1.69
秋(1部4位) 4勝4敗、防御率1.44
4年春(1部3位) 5勝3敗、防御率1.23
秋 2勝0敗、防御率0.69
2部の通算成績は7勝2敗、防御率2.91、1部では17勝12敗、防御率1.37(4年秋は10月1日の国士舘大戦まで)。徐々に成績が上昇していることがわかる。
「変化球でカウントを整えられないっていうか、困ったらストレートというピッチャーだったんで、どうしてもストレート一本で張られてしまうと厳しい部分がありました」(『アマチュア野球』26号より引用)
この言葉は2部時代の追想である。この未完の2部時代を経て、澤村はどんどん本格化していく。たとえば、昨年秋のシーズン途中に取材したときは「もともと、左肩の開きが早いんです」と言うが、今現在、左肩の早い開きは認められない。というか、今の澤村を見ていると、投球フォームにはほとんど目が向かない。変化球のキレのよさとか、クイック、バント処理などのディフェンス面とか、そういう方面だけを見ている自分に気づく。フォームを云々する次元はすでに通り越しているのである。