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斉藤和巳の来季契約は残酷か否か?
最近のプロ野球界はリスク減少傾向。 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2010/09/22 12:35

斉藤和巳の来季契約は残酷か否か?最近のプロ野球界はリスク減少傾向。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

 先日、ある男子プロゴルファーの取材をし、3000円ちょっとの昼食をごちそうしようとしたら「こんなに高級なところでいいんですか?」と驚かれた。

 いや、驚いたのは、むしろこっちの方だった。その選手は、かつて賞金王争いも演じ、優に1億円を超える賞金を稼いでいた選手だったのだ。こちらとて取材の続きとお礼を兼ねるつもりで、せめて昼食だけでもと奮発しただけだったのだが……。

 そのときふと思い出したのが斉藤和巳だった。

 言わずと知れたかつてのソフトバンクの大黒柱で、2003年、2006年と二度も沢村賞を獲得している。

 プロ野球の世界は、他のプロスポーツ界同様「実力の世界」だという。だが、それはある面正しく、ある面正しくない。

 団体スポーツは大抵そういうものだが、過去の実績で未来の報酬が決まる。つまり、極端な話、前年活躍すれば、その年1試合も出なくとも相応の給料がもらえるのだ。その翌年も、よっぽどのことがない限りガクンと落ちることはない。

 斉藤がまさにそうだった。

 右肩を故障している斉藤は2007年のクライマックスシリーズ以降、1試合も登板がない。つまり2008年はまったく登板がなかったのだが、それでも翌2009年は2億、今季も1億2000万円もらっているという。

プロ野球からリスクと緊張感がどんどん失われつつある?

 その点、個人スポーツであるゴルフはもっと明快だ。デビュー1年目であろうとも勝てば1億円稼げるし、前年いくら稼ごうとも、翌年、普通はそこまで極端なことはないものの、全試合予選落ちしてしまえば無報酬ということもありえる。

 冒頭の選手も、そこまで極端ではないにせよ「今はもっぱらファミレスですよ」と苦笑していた。

 どんなプロスポーツも、その魅力の土台となっているものはリスクだ。リスクがあるからこそ緊張感が生まれ、プレーの輝きが増すのだ。またそれゆえ、一般人には到底考えられないような報酬を得ることもできる。

 2004年、近鉄とオリックスが合併し、球団数が削減されそうになったとき、当時、選手会の会長という立場もあったのだろう、それに猛反対していた古田敦也が「選手の雇用の場が減ってしまう」という主旨の発言をしていた。全部を否定するわけではないが、どこか白けた気分になったことも事実だった。プロ野球選手の割にサラリーマンみたいなことを言うのだな、と。

 理由はどうであれ、いつなんどき雇用の場を失いかねない、つまりは報酬が0円になりかねないというリスクのないプロスポーツなど、見ていてもおもしろくもなんともないではないか。

【次ページ】 斉藤は丸4年間投げないことになるのだが……。

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