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斉藤和巳の来季契約は残酷か否か?
最近のプロ野球界はリスク減少傾向。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/09/22 12:35
斉藤は丸4年間投げないことになるのだが……。
ひと昔前までは、プロ野球選手といえば単年契約が普通だった。
だが今はベテランの主力ともなれば複数年契約が主流だ。それがプロ野球の魅力を削いでしまったのだと言ってしまったらあまりに短絡的だが、そうした保守的な思想があらゆるところで当然のように持ち出され、プロ野球界全体が以前よりも野性味を失ってしまったという気はしないでもない。
今年2月に右肩の再手術に踏み切った斉藤の復帰は、順調に回復しても、2012年になるという。したがって2008年から2011年まで、丸4年間、まったく投げていないことになるのだ。
球団も功労者だけに最初は優しかった。だが来季は斉藤に対し育成選手として契約するつもりであることを通達した。そうなると年俸は一気に1000万円台までダウンする見込みだ。それでも個人スポーツに比べれば恵まれていると言っていいだろう。
「プロ野球選手として生きる」という内容が問われる時。
これを冷酷と見るか、当然と見るかは意見の分かれるところだ。
ただ、どんな親でも、不慮の事故で働けなくなってしまった息子に対し、最初は優しいものだ。慰めの言葉をかけ、経済的援助も厭わない。でも、その状態が何年も続いたとしたら、扱いは粗雑となり、何かしら言いたくなるものだ。もちろん息子が立ち直ることを期待して。
斉藤は球団のこの提案に対して、どう答えるのだろう。単純な金銭だけの問題ではない。斉藤にとっては、プロ選手としての生き方が問われているといってもいい。もっといえば、斉藤だけでなく、今のプロ野球選手のプロとしての矜持が試されている。