野球クロスロードBACK NUMBER
ロッテを率いる西岡の異常な出塁率。
CS進出もイチローの記録も射程距離!?
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byToshiya Kondo
posted2010/09/21 12:10
9月20日現在で打率はリーグ2位の3割4分1厘、安打数はリーグトップの194本。
昨日も楽天相手に先頭打者ホームランと6回にも追加の2ランを放ち、さらに延長12回にはこの日4本目となるヒットで2死から出塁。激走の末に決勝点を刻んでいる。
とりわけ、安打に関してはイチローの持つ歴代1位の26度の猛打賞まであと1度に迫っているなど、千葉ロッテの西岡剛は開幕から安定した数字を残している。
チームは、野手、投手陣に故障が相次ぎ、万全な状態が続いているとは言い難いが、それでもクライマックスシリーズ進出圏内の3位に踏みとどまっていられるのは、西岡がこのようにリードオフマンとしての役割をしっかりと果しているからだ。
ただ、打率や安打数だけで今シーズンの西岡の活躍を判断してはいけない。これらは、いわば副産物と言っていいだろう。
西岡の脅威。それは、「出塁すれば点が入る」ことにある。
「今年は打てないかな、と思っていた」
最近のゲームでも、それは顕著に表れている。9月14日のソフトバンク戦では3安打中2本が得点に絡み、延長11回にはファーストゴロながらサヨナラ劇を演出。16日には先頭打者アーチでチームに勢いをつけた。18日の楽天戦でも9回の勝ち越しタイムリーなど2度得点に絡み、19日のゲームでも敗れはしたが、第1打席に先制の、第3打席では逆転を呼び込む四球を選んだ。
つまりは出塁率。ここにこそ、今年の西岡の飛躍の理由が隠されている。
16日のゲーム後、西岡は今季の好調ぶりを誇るわけでもなく、こう呟いた。
「今年は打てないかな、と思ってた」
振り返れば、昨年は西岡にとって試練のシーズンだった。
「200本安打」「首位打者」と大きな目標を掲げながら、怪我などの影響で出場は120試合。打率も規定打席に到達したシーズンでは最低の2割6分に終わった。
この苦悩を経てキャプテンに任命された今シーズン、「打てないかな」という悲壮感は、西岡を徹底したチームプレーへ意識転換させた。
今シーズンの西岡には無駄なスイングがほとんどない。
「今年は、とにかく塁に出ることを考えています。チームにとって初回に先制点を取ることは大事。トップバッターとして、そりゃあヒットで出られるなら嬉しいけど、フォアボールでもなんでもいいから塁に出る。出塁率にこだわっていきたい」
この言葉通り、今シーズンの西岡には無駄なスイングはほとんどない。
先頭打者本塁打を放った16日の打席も、カウント1-3となってからのストライクの球も安易に前へ飛ばそうとはせず、甘いボールがくるまでファウルでとことん粘った。その結果、8球目の真ん中低めの甘いストレートを強振することができた。
昨シーズンは8本打っている先頭打者本塁打も、今シーズンはこの1本が初めて。「しっかり粘れたホームラン。(これまで打った)9本のなかでも一番嬉しかった」と西岡は語っていたが、単に本塁打という結果ではなく、出塁を心掛け、粘れた末に飛び出た一発だからこそ、「嬉しい」という言葉が素直に出たのだろう。