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【コンフェデ2013 出場国解説】
絶対的エースは香川のチームメイト。
ロンドン五輪金、メキシコの充実。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byLatinContent/Getty Images
posted2013/06/07 10:30
メキシコ代表として47試合32ゴールを挙げ、絶対的なエースとして君臨している“チチャリート”ことハビエル・エルナンデス(マンチェスター・ユナイテッド所属)。
出場全8カ国の解説コラムを毎日公開していきます。
今回は、日本と同じグループAに属し、6月22日に対戦するメキシコ。
テンポの良い流麗なサッカーで“栄光の歴史”の再現を目指す。
1940年代にメキシコ発祥で広がった農業改革を“緑の革命”と呼ぶ。この言葉がサッカー界でも当てはまるような躍進を、緑のユニホームに身を包むメキシコ代表が見せたのは昨夏のことだった。もちろん、ロンドン五輪での金メダル獲得のことだ。
地域 | 北中米カリブ海代表 (ゴールドカップ2011優勝) |
出場回数 | 2大会ぶり6回目 |
監督 | ホセ・マヌエル・デラトーレ |
FIFAランキング | 16位(5月9日現在) |
大本命と見られていたブラジルを決勝戦で下して、初の快挙を達成したメキシコ。'11年に6戦全勝で制覇したCONCACAFゴールドカップのメンバーが中核となりつつも、五輪優勝メンバーも9人(オーバーエイジ枠含む)が選ばれており、デラトーレ監督の下でチームの底上げは順調に進んでいる。
五輪での躍進が象徴するように、メキシコには海外・国内組を問わず有望株が揃う。中でも、パチューカに所属するエクトル・エレーラは、リバプールが関心を持っていると報じられるほどのテクニシャンで、今大会が欧州移籍へのアピールの場になるはずだ。
マンUに数々の歓喜をもたらした絶対的なエース、エルナンデス。
エレーラをはじめ若手選手の宝庫であるメキシコだが、絶対的なエースはマンチェスター・ユナイテッドで香川真司と同僚のハビエル・エルナンデスだ。
スペイン語で「小さな豆」の意味を持つ“チチャリート”という愛称で呼ばれるエルナンデスは、身長175cmとストライカーとしては体格に恵まれているとは言えない。それでも抜群のジャンプ力と嗅覚に目をつけたのは、アレックス・ファーガソン監督(当時)だった。2010-'11シーズンに赤い悪魔の一員となって以降は、数々の歓喜をチームにもたらした。メキシコ代表でもその得点能力を存分に発揮し、5月31日現在で47試合32得点の成績を残している。
そのエルナンデスは、先月行われたナイジェリアとの親善試合で2得点を叩き出し、好調をキープしている。ちなみにその2得点は、中盤でのテンポのいいパス回しからサイドに開き、低弾道のクロスをエルナンデスが点で合わせる小気味のいい展開だった。
試合は2-2の引き分けに終わったものの、緩急をつけたパスワークとスピーディーな仕掛けを兼備した攻撃は、列強国以上の流麗さを感じさせる。
ブラジルとの打ち合いを制した、コンフェデ杯での“栄光の歴史”。
充実感の漂うメキシコが不安材料を抱えているとすれば、4日から11日までにW杯北中米カリブ海最終予選を3試合戦ってから、16日にイタリアとの初戦に臨まなければならない厳しい日程だろうか。
それでも現在の代表メンバーを奮い立たせるには十分な、コンフェデ杯での“栄光の歴史”がある。
開催国枠で出場し、FIFA主催の国際大会で初のタイトルを勝ち取った'99年大会だ。
超攻撃的GKとして日本でも人気を博したカンポスや“カニばさみフェイント”で相手を幻惑したブランコらのベテラン勢と、当時20歳ながらセンターバックを務めたラファエル・マルケスなど若手がミックスされたチームは、無敗でグループリーグを首位で突破する。その勢いのまま、決勝のブラジル戦では4-3と打ち合いを制したのだった。
14年の時を越え、再び母国に歓喜をもたらすために――。着実に力を積み重ねた中米の雄は、ブラジル、イタリア、そして日本の噛ませ犬になるつもりは毛頭ない。