セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
笑った者と泣いた者の明暗くっきり。
“婚活”のようなセリエ監督交代劇。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2013/06/05 10:31
ナポリを強豪へと復活させたマッツァーリ監督。来季からは“新居”のインテルで指揮をふるう。
イタリアでの監督選びは、よく配偶者選びに例えられる。クラブと監督の“結婚生活”が上手くいくかどうかは、雇用関係を超えた互いの信頼によるところが大きい。悲喜こもごものシーズンが終わった今、クラブと監督の“婚活”があちこちで始まった。
9位という屈辱的な今季の順位に失望したインテルのモラッティ会長は、経験不足が目立った37歳のストラマッチョーニ監督を解任し、新たな伴侶を迎え入れた。
来季インテルの指揮を執るのは、ナポリとの契約を満了したばかりの智将マッツァーリだ。
「金の問題ではない。サッカーの世界に生きている以上、新たな刺激が必要だった」
1日に3箱を空にするヘビースモーカーの指揮官が率いた3年半の間に、ナポリはセリエAの強豪へと完全復活を遂げた。クラブにとって21年ぶりの出場だった昨季のCLで16強入りを果たし、今季もスクデットは逃したものの、6年前の昇格以来最高位となる2位を獲得した。念願の得点王を獲得したエースFWカバーニのゴールセンスを開花させたのもマッツァーリだ。
新天地インテルでの目標は、2年連続王者ユベントスからのスクデット奪回にある。マッツァーリは、現在リーグを席巻する3バック・ブームの先駆者として、3-5-2でセリエAを制したユーベに並々ならぬライバル心を抱いている。リーグ最高レベルのトレーナー陣を含む自らのコーチングスタッフを引き連れ、移籍市場戦略についての発言権も手に入れた。
仕事の鬼・マッツァーリなら……選手たちのやる気を引き出せる。
前任者ストラマッチョーニは、若さ故の経験不足からロッカールーム掌握に失敗したが、海千山千のマッツァーリは、選手たちのやる気を引き出すモチベーターとしての手腕も確かだ。
試合でたとえ明らかなミスを犯しても、マッツァーリは自らが盾となって、選手を外部の批判から守る姿勢を崩さない。仕事の鬼として知られるマッツァーリの指導は厳しいが、誰に対しても分け隔てなく接し、扱いはフェアだ。意気に感じた選手たちは、こぞって彼のために戦おうとするのが常だ。
打倒ユーベ、スクデット奪回を狙う上で、マッツァーリ以上の人材を探すことは難しい。