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欧州サッカーにハリウッドが進出!?
ユーロの舞台裏を仕切るCAAの野望。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2013/06/02 08:02
フランスで行なわれるユーロ2016について会見を行なう、UEFA会長のミシェル・プラティニ。2002年からUEFAの理事を務めており、2007年に会長に就任した。
ハリウッドの芸能事務所がユーロの商業権を取り仕切る。
しかし、これは地殻変動の表面的な部分にしかすぎない。さらにこのニュースを掘り下げると、ヨーロッパのスポーツビジネスの新たな権力者の存在が浮き彫りになってくる。
これまでスポーツビジネス界のマーケティング会社と言えば、W杯の放映権を扱う『インフロント』、CLの放映権を扱う『TEAM』、アフリカ選手権の放映権を扱う『スポーツファイブ』(2006年にフランスの『ラガルデール・スポーツ{後にラガルデール・アンリミテッドに改名}』に買収されて、その傘下に入った)、アメリカのスポーツ界に強い『IMG』が有名だった。
だが昨年10月、UEFAはほぼ無名のマーケティング会社と、代表チームのUEFA主催大会に関して独占契約を結ぶことを発表した。
その会社は、『CAAイレブン』。ハリウッド最大級の芸能事務所『クリエイティブ・アーティスツ・エージェンシー』(CAA)がヨーロッパサッカー界に進出するために2012年6月に設立した新会社である。代表チームが参加するUEFA主催大会の商業権管理を独占的に行ない、すなわち上述のSOCARとUEFAの契約もCAAイレブンが仲介した。
設立直後のCAAイレブンが大手代理店に勝った理由。
CAAのハリウッドにおける存在感は圧巻だ。顧客はジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツ、スティーブン・スピルバーグ……。スポーツ界では、ニューヨーク・ヤンキースのデレク・ジーター、先日引退を表明したデイビッド・ベッカムと契約している。
とはいえ、CAAイレブンは2012年にできたばかりで、母体のCAAもヨーロッパサッカー界では門外漢だ。UEFAと独占契約を結んだのは奇跡に近い。
今回プラティニ会長の号令により、UEFAは初めて、ユーロ2016の本大会と予選、および2018年W杯予選におけるTV放映権とスポンサー権をパッケージにして代理店に販売することを決めた。その巨額の権利をめぐってスポーツファイブとIMGも名乗りを上げていた。
なぜ、CAAイレブンは競争を勝ち抜けたのだろう?
おそらく決め手になったのは、CAAイレブンの創始者と、プラティニ会長の良好な関係だ。
CAAイレブンは、スポーツファイブの親会社であるラガルデール・スポーツから独立した2人のフランス人によって設立された。元チェアマン&CEOのオリビエ・ギゲと、元CEOのシュテファン・シンドラーだ。
CAAイレブンがUEFAに十分な提示額を示したことは間違いないが、プラティニとの信頼関係も大きかったと思われる。