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【コンフェデ2013 出場国解説】
“アウトサイダー”と侮るなかれ!
帰ってきた救世主がタヒチを救う?
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byAFLO
posted2013/06/03 10:30
W杯オセアニア予選でのタヒチ代表。ユニフォームはホーム、アウェイ(写真)共に、フランス領ポリネシアの旗と同じく白と赤を基調としている。
出場全8カ国の解説コラムを毎日公開していきます。
先頭を飾るのは、FIFAランク135位ながら大番狂わせを狙うタヒチ代表。
南太平洋に浮かぶ小島の“救世主”が今大会にかける想いとは――。
今回のコンフェデレーションズカップで一番のアウトサイダー。世界中のサッカーファンに聞いても、返ってくる国名は99%「タヒチ」となるだろう。
地域 | オセアニア代表 (ネーションズカップ2012優勝) |
出場回数 | 初出場 |
監督 | エディ・エタエタ |
FIFAランキング | 135位(5月9日現在) |
5月に発表されたFIFAランキングでは135位と出場8チーム中唯一の3ケタ台。来年行われるW杯ブラジル大会オセアニア3次予選では1勝5敗の3位に沈み、すでに出場の望みを絶たれている。昨年6月のオセアニアネーションズカップ(W杯オセアニア2次予選を兼ねた大会)で初優勝を飾ってコンフェデ杯出場権を手にしたタヒチだが、本命と見られていたニュージーランドのつまずきなどの幸運に恵まれた栄冠だった。
そんなタヒチは国際大会の経験が非常に浅く、主だった出場経験は'09年のU-20W杯エジプト大会だけ。そこでは奇しくも、今回のコンフェデで同じグループBとなったスペイン、ナイジェリアと対戦している。しかし結果はナイジェリアに0-5、ジョルディ・アルバらを擁したスペインとの試合では0-8の惨敗を喫した。特にスペイン戦ではシュート数は相手の24に対してタヒチは2、支配率に至ってはスペインが76%を記録するなど、世界との差をあからさまに突き付けられた90分間だった。
経験豊富な童顔の“救世主”マラマ・ヴァイリュア。
今回の代表メンバーにはU-20W杯を経験したメンバーが4人含まれているが、彼らを含めても大半の選手が国内組で力不足は否めない。そんな苦戦が予想されるタヒチ代表の“救世主”として期待されているのがマラマ・ヴァイリュアである。
タヒチ出身ながらU-21フランス代表に選出された経験のあるヴァイリュアは、身長172cmと決して大柄ではないが小気味いい突破力が武器のアタッカー。'99年にフランスの名門・ナントでデビューを果たして以降は、ニースやモナコなどフランスリーグで長年にわたって活躍。'12-'13シーズンからギリシャのパントラキコスに移籍するとリーグ戦26試合に出場して3ゴールを挙げるなど、33歳ながらもまだまだ衰えを知らない。
フランスの世代別代表に選出されていたこともあって、若手の頃はトリコロールのユニホームを目指していたヴァイリュアだが、祖国が大舞台への出場を決めたことでタヒチ代表のユニホームに袖を通すことを決意した。童顔ながら経験豊富なアタッカーは、FIFA公式サイトで、タヒチの期待を背負う想いをこう語っている。
「タヒチのフットボールが“島”を越えて、さらに上のレベルへと行くためのチャンスなのだと思います。コンフェデレーションズカップは、タヒチのサッカープレイヤーにとっては間違いなくプロの世界を切り開くための扉なのですから」
ゴールを決めた際には、カヌーを漕ぐ“パドリング・パフォーマンス”を行うことで有名なヴァイリュア。南太平洋に浮かぶ小島の代表チームにとって、史上最大となる冒険の船頭役になる覚悟はできている。