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<特別インタビュー> 小林可夢偉 「ただ一つの道を見据えて」 ~F1シーズン後半戦へ向けて~
text by
今宮雅子Masako Imamiya
photograph byHiroshi Kai
posted2010/08/27 06:00
フェラーリ一筋のイタリアプレスも「コバヤシ」を連呼。
夏休みが終わると、低速コースのハンガリーからは一変、F1は高速コースのスパ・フランコルシャン、モンツァへと向かう。
「僕らのクルマに向いてるのはイスタンブール、シルバーストン……、そこでポイントを獲れてきたことを考えると、スパと鈴鹿は大丈夫やと思います。逆に、モンツァはストレート速度が大事なんで、何もいいことないですね、きっと。シンガポールはあの路面の凹凸と縁石をどうやって越えるか考えたら、僕らだけコーナーの数が多くなるかもしれないし、もう大変ですよ(笑)。逆に言うと、モンツァとシンガポール以外はポイントを獲れるかもしれない。自分らのクルマに合うコースでできるだけ多くポイントを獲って、それ以外のサーキットでもこまめにポイントを重ねていけたら……。シーズン序盤は運が悪かったりマシントラブルが出たりしてみんな苦労したけど、そこからクルマも正しい方向に開発が進んできた。僕もカナダでコースアウトした以外は失敗してなくて、タイヤの使い方もわかってきたし、ここまで悪くはないと思う。ちゃんと仕事をしてきたと思います」
コース上の華やかな“演技”でTVカメラを惹きつけるドライバーは、どんなときにも周りがよく見えている。生まれつきの才能はF1の本場であるヨーロッパで強く認識され、フェラーリ一筋のイタリアプレスにさえ「コバヤシ」を連呼させる。取材に来る各国のテレビは、最初の質問をする前にも可夢偉の笑顔にリラックスし、心を許してしまう。
風雲児の印象と賢明な青年の思考が、メリハリのあるコース上の姿と絶妙にマッチする。勝てるマシンを手にするまで、これはひとつのレースなのだと繰り返す小林可夢偉は、23歳――F1はまだスタートしたばかりだ。