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「セナとフェルスタッペン、どちらが速いのか」ミカ・サロ、イワン・カペリらF1関係者の見解「ふたりとも不世出のドライバーだが……」
posted2025/01/24 11:04

マクラーレン・ホンダ時代のセナ(左)と2024年に4回目の王座を獲得したフェルスタッペン
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尾張正博Masahiro Owari
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Getty Images / Getty Images/Red Bull Content Pool
これまで幾度となく、異なる時代に生きた2人のドライバーが比較されてきた。その中のひと組に、アイルトン・セナとマックス・フェルスタッペンがいる。
ふたりを比べたくなる気持ちが強まったのは、2024年に雨のサンパウロGPでフェルスタッペンが衝撃的な走りを披露したときのこと。エンジン交換によるグリッドペナルティで17番手からスタートしたフェルスタッペンだったが、1周目に6台を抜き、その後も異次元の走りで逆転優勝を遂げた。
その走りを、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表はこう称えた。
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「今日の彼のスタートは、1993年のドニントン(セナが逆転優勝したヨーロッパGP)を彷彿とさせた」
セナとフェルスタッペン──果たして、どちらが速いのか?
専属マネージャーとしてセナの黄金時代を支え、24年までセルジオ・ペレスのマネージャーとして、間近でフェルスタッペンを見てきたジュリアン・ジャコビは、「ふたりを比較することは不可能だ」と言い、こう続けた。
「モータースポーツはF1マシンという道具を操って戦うスポーツ。その道具が20世紀と21世紀では大きく異なるから、比較することはできない。ただひとつ言えるのは、ふたりとも雨の走りは卓越しているということだ」
「マックスはより完成されたドライバー」
セナが命を落とした94年シーズンの終盤にF1にデビューし、その後02年まで9シーズンにわたってF1の世界で戦った経験を持つミカ・サロもまた、「どちらが速いかなんて答えるのは難しい」と言葉を詰まらせながらも、「ただ、個人的な意見を言わせてもらえば、マックスのほうがより完成されたドライバーとして、セナを上回っているのではないか」という結論を出してくれた。
F1取材歴500戦以上を誇るポルトガル人ジャーナリストのルイス・バスコンセロスもまた、「もし同じマシンを走らせたら、マックスのほうがアイルトンより完成されたドライバーだ」と主張する。
「ふたりとも不世出のドライバーだという前提で比較した場合、マックスの方が弱点が少なく、オールラウンドに優れたドライバーだと思う。例えば、アイルトンは予選は速かったが、レースになるとシーズン中に何度かアップダウンがあった。その要因は体力的に問題を抱えていたからで、幼少期から父親のスパルタ教育で育ったマックスにはそれはない。アイルトンは市街地コースのモナコと雨のレースで速かったが、マックスはどんな状況でも、どのコースでも常に速い」