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日本人メジャー選手による、
ある偉大な記録が大ピンチ!? 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byKYODO

posted2010/08/24 10:30

日本人メジャー選手による、ある偉大な記録が大ピンチ!?<Number Web> photograph by KYODO

チームの勝利を最優先するという日本野球の神髄。

 まだメジャー球界で日本人選手の占有率が微々たる中で、毎年日本人選手が確率“2/30”に残りワールドシリーズの大舞台に立ち続けたことは驚異的だろう。しかも2008年のフィリーズ在籍の田口壮以外、すべてチームの主力だった。強豪チームに所属していたと言えばそれまでだが、新庄、井口、松井稼、岩村に関しては、彼らのチームがワールドシリーズに進出することを期待していた者などいなかったはずだ。

 この連続記録こそ、いかにメジャーで日本人選手が“勝てるチーム”で機能しているかを裏づける証拠といえる。今では、日本人選手の動作、プレー、思考法など野球選手としての“基本”の高さを、メジャー関係者で疑うものはいなくなった。これこそ、幼い頃から繰り返しチームプレーを叩き込まれている日本野球の神髄に他ならない。常にチーム第一に考えるプレーをその根本的な心情とする日本人選手は、ワールドシリーズ優勝を考える指揮官にとってこの上なく貴重な存在なのだ。この資質がある限り、メジャーから日本人選手が途絶えることはないだろうと信じている。

野茂以来、15年連続でプレーオフ進出を果たす日本人選手。

 さらにプレーオフ全体に目を転じると、プレーオフの出場選手枠に入ることができなかった1997、1998年のヤンキース時代の伊良部秀輝も加えれば、なんと1995年の野茂英雄以来15年連続で日本人選手が所属するチームがプレーオフに進出しているのだ。現在よりも選手数が少なかった当時から続いているのだから、これまた驚嘆すべき記録ではないだろうか。

 だが残念なことに、今シーズンはこの2つの連続記録に黄信号が灯っている。

 現状ではプレーオフに進出できそうなのは斎藤隆が所属するブレーブスぐらいなのだ。まだ可能性が残っているとはいえレッドソックス、ドジャースはかなり厳しい状況に追い込まれている。またブレーブスにしてもフィリーズと熾烈な首位争いを演じており、正念場はこれからだ。

 果たして今年のワールドシリーズの晴れ舞台で日本人選手のプレーを見ることができるのか。連続記録を含め、残りシーズンの日本人選手の戦い方に注目していきたい。

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