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「裏切り」と「驚き」があった早実。
奇跡を見せずに終わった甲子園の夏。 

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byHideki Sugiyama

posted2010/08/17 20:00

「裏切り」と「驚き」があった早実。奇跡を見せずに終わった甲子園の夏。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

早実の和泉監督は「野球がわかっていない」!?

 和泉のことを「野球がわかってない」と揶揄する声も聞こえてくる。が、あえて、わかろうとしていないのだ。もっといえば、わかったと思っても、あえてわかっていないという態度を貫こうとしている。

 大人の「わかった」が、いかに高校生の成長の妨げになるかを知っているからだ。

 そんな早実のことだから、3回戦の関東一高戦でも、また新たな一面を見せてくれるのではないかという期待感があった。こんな力も秘めていたのか、と。和泉もそれを楽しみにしていたに違いない。

 だが今思えば、0点に終わった初回の攻撃が悔やまれる。もっとも得点率の高い1回に相手は4四球も与えてくれていたのだ。あそこは、それこそ全身全霊をかけ、点を奪いにいくべき場面だった。あるいは、前の試合の21点という記録的な勝利が、1点に対する執着心を鈍らせていたのだろうか。

 いずれにせよ、あそこに「鍛え上げられた感」の無さが、まず出ていたように思える。

 でも、もしこの試合を乗り越えていれば、次の試合では必ず修正してきていたに違いないのだ。実際、ランナーコーチャーの指示は、中京大中京戦の反省があってのことだろう、今日は実に的確だった。

 この試合は、たまたま鍛え上げられていない項目が命取りになってしまった。勝てば「奇跡」と呼んでもいい変化を見せるチームだけに、それとは裏腹に、常にこういう敗戦の可能性も内包しているということなのだろう。

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