MLB東奔西走BACK NUMBER
追悼「神の声」&「The Boss」。
MLBで燦然と輝いてきた2つの巨星。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2010/07/25 08:00
2008年9月21日、旧ヤンキースタジアムでの最後の試合では、シェパード氏がビデオ形式で満員の観客に向けて球場への思いをつづった詩を朗読した
意に沿わぬ者を排除する一方、無償の愛を与えることも。
だがそんなワンマン、豪腕ばかりが目立つ一方で、目をかけた選手たちには無償の愛を与える優しさもあった。
麻薬使用や飲酒運転などスキャンダルまみれだったドワイト・グッデンやダリル・ストロベリーに長らく愛の手を差し出し続けたのはとくに有名だ。訃報後、関係者から「父のようだった」、「最高の友だった」という言葉が相次いで聞かれるのも、スタインブレナーの偽らざる姿なのだ。
私も何度となく記者の囲み取材に加わったことがあるが、そのユーモアあふれる応対ぶりに拍子抜けと親しみを感じた一方で、彼の周りで常に緊張からピリピリムードを漂わせるスタッフが印象的だった。そのギャップがより一層スタインブレナーのオーラを際立たせていたと思う。
メジャー球界に燦然と輝いてきた2つの巨星が消え去り、何となく一つの時代が幕を閉じたような空虚感に苛まれている。合掌。