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“ピルロの呪い”は過去のものに!?
バイエルン、ユーベ撃破で4強へ前進。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byBongarts/Getty Images
posted2013/04/03 12:20
試合後、唖然とするピルロと勝利を喜ぶリベリー。ユベントスホームで迎える2ndレグ、ピルロはその力を発揮することができるのか?
ユーベのプレスに易々とボールを奪われるバイエルン。
マトリとクアリアレッラの2人のFWがプレスのスイッチを入れる。中盤の底に位置するピルロの前の2人、ビダルとマルキージオの運動量はすさまじく、相手のボールホルダーに素早くプレスをかけていく。サイドに開いたリヒトシュタイナーがミュラーを、ペルーソがリベリーをマークした。
国内リーグでは悠々とボールを回しているバイエルンが、簡単にボールを奪われていった。プレーが切れたときにはリベリーがベンチの前に駆け寄り、ハインケス監督に険しい表情で話しかける。あるいは、ハインケス監督が身振り手振りで、他の選手のポジショニングに注文をつける。実際、前半のバイエルンのショートパスの成功率はわずか54%にとどまった。後半には74%を記録するのだが、前半の低い成功率は彼らの苦戦を表している。1-0と刻まれたスコアを除けば、バイエルンにとって明るい材料はなかった。
クロースの負傷退場が結果的に“怪我の功名”に。
そんな流れのなか、16分にクロースが大腿筋を痛めて、交代を余儀なくされた。代わりにロッベンが投入され右MFに入り、それまで右サイドでプレーしていたミュラーがトップ下に移った。怪我の功名。これが奏功した。
パスを散らしていくクロースに代わりミュラーがトップ下に入ったことで、2列目の選手がポジションに縛られずに動いていく。さらに、序盤から監督が再三指示を送っていたポジショニングについても改善された。ときに、中央から右サイドにロッベン、ミュラー、リベリーが殺到することもあったが、そのために相手はプレッシャーをかける相手をつかみづらくなり、少しずつバイエルンがペースをつかんでいく。
32分には右からのクロスにロッベンが合わせ、42分にはペナルティエリア内左サイドで受けたミュラーの落としをシュバインシュタイガーが狙う。前者はGKに阻まれ、後者はクロスバーの少し上へ外れていったが、ペースは彼らのものだった。
後半になると、さすがのユベントスも前半ほどの勢いでプレスをかけられなくなっていた。この状況を見てブチニッチとジョビンコを呼び寄せたユベントスのコンテ監督は、再び最前線から相手にプレッシャーをかけていこうと目論んでいたはずだ。
しかし、2人のFWが交代の準備をしようとしていた後半19分、再びゴールが生まれる。ミドルシュートのこぼれ球を拾ったマンジュキッチが冷静に中央に戻すと、ミュラーがこれを押し込んだ。バイエルンにとって待望の2点目だった。
ユベントスの交代がもう少し早ければ、あるいは、守備陣がもう少しだけ持ちこたえていれば……。この試合のカギを握る時間帯でのゴールだった。