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大坂なおみとサーシャ・バイン。
初タイトルに敏腕コーチとの出会い。
posted2018/03/21 09:00
text by
吉谷剛Tsuyoshi Yoshitani
photograph by
Getty Images
出会うべくして出会ったのかもしれない。
20歳になって迎えたシーズンでさらなる飛躍を胸に秘めた女と、自分の手で新たな世界女王を育てたいという野心を持った男が。全豪オープンでの16強進出からわずか1カ月半で、四大大会の次に大きな舞台BNPパリバ・オープンでのツアー初優勝。この大きな成果は、決して運や偶然で得られるものではない。
女の名は大坂なおみ。大阪生まれの米国育ち。性格は天然で内気。SNSやネットフリックスでのドラマ観賞が趣味で、豪快なテニスとは対照的にインドアないまどきの若者。
男の名はサーシャ・バイン(本名はアレクサンダー・バイン)。33歳のセルビア系ドイツ人。選手としては大成せず、早々とコーチ業へ転身した。甘いマスクで性格は明るく、曲がったことが嫌い。女に言わせれば「皮肉屋」で「気にしい」。
セリーナのパートナーを務めたことも。
2人の出会いは昨年12月上旬。新コーチを探していた大坂のもとにサーシャが呼ばれた。男の手腕はテニス業界にいる者なら誰もが知っていた。サーシャは長年、最強女王セリーナ・ウィリアムズ(米国)のヒッティングパートナーを務めてきた。10代から活躍し、30歳を過ぎても強さを増したセリーナを支えたのはその練習量の多さにある。
ある四大大会では、まだ守衛しかいない会場に早朝7時ごろに現れ、静かなコートで快音を鳴り響かせていたことがあった。もちろん一休みして午後からも練習。おそらくその場で文句一つ言わずに、球出しに付き合っていたのがサーシャだったはずだ。
他にも全豪2勝のビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)をサポートし、昨年は大舞台に弱かった「無冠の女王」こと、キャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)のもとで彼女を支えた。ウォズニアッキは今年1月の全豪で悲願の四大大会初制覇を果たして世界1位に復帰し、汚名を返上。サーシャの力なくして、この復活はなかった。