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<復帰への決意> 上村愛子 「スキーで周りを喜ばせたい」 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byShino Seki

posted2013/02/20 06:01

<復帰への決意> 上村愛子 「スキーで周りを喜ばせたい」<Number Web> photograph by Shino Seki

「長い間かけて、身につけたことは忘れないんだな」

 体力不足もあれば、通常のシーズンよりも練習再開から開幕までが短かった不安もあった。その中での好成績に、「びっくり」した。同時に思ったことがあった。

「長い間かけて、身につけてきたことは忘れないんだな」

 技術への自信、つまりは自分への自信を取り戻したのである。大会の直後には、自然にこう言えるようになった。

「負けたくない気持ちが湧いてきました。ソチ五輪を目指したいですね」

 不安を拭い去ることができたのは、次の言葉にも表れている。

「(苗場で)ひとつ壁を越えました」

 裏づけを手にし、5度目のオリンピックへと気持ちが定まったときだった。

 このシーズンは練習不足を補うためにその後のワールドカップは欠場し、迎えた今シーズンは、開幕戦で、またひとつ、手ごたえを得ることになった。フィンランドのルカで行なわれた開幕戦のデュアルモーグルで3位と再び表彰台に上がったのである。

今なお、「Aiko Uemura」の名がジャッジに与える印象。

「今シーズンが始まる前に思っていたよりも1戦目の結果はよかったです」

 結果以上に大きかったのは、ジャッジの自分への視線だった。

「自分が考えているよりも、点数は高かった。技術が高い人だと見てくれているんだと思います」

 採点競技は、どこか「印象」が採点につきまとう。実績のある選手には点数が出やすい。思っていた以上の得点が出たことに、今なお、「Aiko Uemura」の名がジャッジに強い印象を与えていることが実感できた。来シーズンへ向けての心強い材料でもある。

 一方で反省も忘れない。

「2戦目は予選落ちでしたが、もしかしたら1戦目で結果がよかったので、(気持ちが)ふんわりしてしまったのかなと思います。細かいミスもちょこちょこしていましたね」

【次ページ】 「気持ちは16歳のときのようです」

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