野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
球界最強のモノマネ王が引退――。
DeNA高森勇旗の“ビミョー”な去り際。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byHidenobu Murase
posted2013/01/29 10:30
斎藤佑樹、田中将大と同学年。モノマネのレパートリーはイチロー、小笠原道大など幅広い。写真は、昨年11月にKスタ宮城で行われたトライアウトに挑んでいた時の高森。
「ぐっさんと武井壮と栗山監督を足して3で割った感じ」
ファンから愛され、明るくて笑いも取れる魅惑の長距離砲。クビになったとはいえまだ24歳。環境が変われば大化けするポテンシャルは十分にある。野球界のためにもこういう選手が出てきてくれれば面白いのだが……。
「いや、これで野球は終わりです。12球団からの連絡がなければ、きっぱり引退します。やりたいことが、いっぱいあるんです」
昨年12月。NPB球団からの連絡が届かなかった高森は、宣言通り野球界から引退した。
「“まだ若いのにもったいない”と、たくさんの人に言っていただき有難かったのですが、僕自身は野球に関してはもうやり切ったので、悔いはありません。ただ、モノマネタレントやお笑い芸人になると思っている人が多いみたいですけど、そうじゃないんです。
目標はぐっさんと武井壮と栗山監督を足して3で割った感じといいますか、最終的に目指すところは……なんて言えばいいんでしょう。もっと大きな括りで世の中のありとあらゆる感動……生きていることの美しさから、野球の素晴らしさ、温泉の醍醐味までを伝えるというか……欲張りなんですよね。勉強もしたいし、資格も取りたい、いろいろできてしまうから全部やってしまいたいって。ただ、モノマネだけはしばらく封印しようと思っています」
その目標の最終地点におわすのは結局パンチ佐藤氏なんじゃないかという疑念が湧くが、どうやらそうでもないらしい。
モノマネは「引き出しのひとつ」としばしの封印を宣言。
だが、タレントの道を選びながら、あえてモノマネを封印しての芸能界挑戦とはいささか衝撃である。魅惑の大砲・高森勇旗は、何を企んでいるのだろうか――。
「確かに、モノマネで行けば一番話題になるとは思いますけど、安易にそこへ甘えてしまったら自分の可能性を潰してしまうと思うんです。野球のことをはじめ、真剣なことを伝えたいと思っても、『世間は高森にモノマネしか求めていないから』となってしまう。もちろん、自分を売るきっかけになればとは思うんですけど、それをすべてにはしたくない。あくまでも、引き出しのひとつ。枠にとらわれずに、いろんなことをやりたいので今のところ事務所に入るつもりもありません。まぁ……ちょっと長くなりますが聞いてください」