南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
ベスト16では誰も満足していない。
代表選手たちが語るパラグアイ対策。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byNaoki Nakanishi/JMPA
posted2010/06/28 11:20
27日午前、3週間過ごしたベースキャンプ地のジョージを後にした岡田ジャパンは、一路プレトリアへ向かった。標高1200メートルのこの都市は南アフリカの首都であり、決勝トーナメント1回戦、パラグアイとの試合が行われるロフタス・バースフェルド競技場がある。
夕刻からの練習取材で特に注意して観察したのは、選手から「達成感」が出すぎてはいないかという点だった。
記憶に浮かぶのは2002年だ。トゥルシエジャパンは、今回の岡田ジャパンと同様の「引き分け以上でグループリーグ突破」という条件で第3戦のチュニジア戦に臨み、2-0の快勝で決勝トーナメントに駒を進めた。
ところがこの時点で、監督、選手、マスコミを含め、日本全体にある種の「達成感」が漂ってしまったことは否めない。
ノックアウトステージ1回戦のトルコ戦は、不完全燃焼のまま敗戦の瞬間を迎えてしまった。
パラグアイの映像素材を分析し、編集ビデオに。
結論から言うと練習を見た限り(冒頭30分間と全体練習終了後のみ公開)、筆者の中にあった心配はほぼ解消された。
カメルーン戦後から続いているほどよい緊張感が保たれ、さすがに連戦の疲労はあるものの、それを吹き飛ばすような明るい表情が見られたからだ。
岡田武史監督も「それは大丈夫だと思います。デンマーク戦直後から“われわれの目標はここで終わりじゃない”と言っていましたし」と、精神面が緩まないよう、既にケアしていたことを明かしている。
もう一つの懸案事項だった高地対策については、長谷部誠がその成功ぶりを詳しく話している。
「スイスからずっと毎朝、尿を取って数値を調べて、その数値で練習量を調整してきました。高地対策は完璧だったと思うし、コンディションは問題ありません」
パラグアイ対策も十分できていると言えよう。スタッフはグループリーグ終了後、わずか2日間で映像素材を詳細に分析し、編集ビデオにまとめた。岡田監督は26日夜のミーティングで攻守の特徴を選手に伝え、27日の練習前にはセットプレーの映像を見せながら、細かい指示を与えた。
さらに非公開練習では映像から得た知識をもとに、選手同士も意見をぶつけ合いながら徹底的な対策を練っている。