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ベスト16では誰も満足していない。
代表選手たちが語るパラグアイ対策。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byNaoki Nakanishi/JMPA
posted2010/06/28 11:20
パラグアイの2トップを熟知する長谷部。
そのパラグアイの印象を、長谷部は「スター選手がいるわけではないけど、球際や1対1に強い」と表現した。2トップはいずれもブンデスリーガのドルトムントでプレーしており、特徴は熟知している。
「バリオスは昨シーズン20点近く(19得点=得点ランク3位)取っていて、万能なストライカー。バルデスはハードワークしてたくさん走る。2人ともすごくいいFWだと思います」
パラグアイの隣国であるブラジル生まれの田中マルクス闘莉王は、その“嫌らしさ”を最も深く理解している日本人だ。
いわく、「ニュージーランド戦のビデオを見ました。リスクを冒していないし、相手のミスを待つような戦いをしていましたね。やり方が賢い。嫌なところ、嫌なところを突いてくる」
中澤佑二は「セットプレーでは人数をかけてゴール前に5、6人入ってくる。一人ひとり技術があり、今までの相手よりも仕掛けてくる感じ。個人の戦いで1人、2人はがされると難しくなる」と警戒心をあらわにする。
韓国が敗れた今、アジア勢唯一の生き残りとして。
ただ、長友佑都が言うように、攻略方法がないわけではない。
「スカウティングでは今までの対戦相手の中で、一番運動量があるし、攻守の切り替えは一番だと思う。でも、食いついてくるから、けっこうギャップが出てくる。DFラインのギャップやスペースを突いて行きたい。攻撃に関しては、(本田)圭佑にボールが入ったときにみんながサポートしていく。圭佑はポストプレーでも体が強くてキープできるから、そこを松井さんや(大久保)嘉人さんや長谷部さんが追い越す。攻撃は活性化していると思いますね」
そして、今回は新たなモチベーションも生まれた。韓国がウルグアイに敗れた今、アジア勢で残っているのは日本のみとなったのだ。長友が「アジアの代表として胸を張って、自信を持って臨みたい」と言えば、長谷部は「アジアのためにも、僕らが勝ちたい」と頼もしい。
前人未到のベスト8へ。長谷部は「ベスト8からが本当の戦い。それは僕だけではなく、いろいろな選手が言っている。勝って、大勢の人に喜んでもらいたい」とすがすがしい表情で意気込みを語った。
気負いはない。けれども、ベスト16では誰も満足していない。'02年に味わったグループリーグの興奮と消化不良の決勝トーナメント終焉から8年。岡田ジャパンが、遠く離れた日本列島と心を一つにして戦うベスト8を懸けた大一番を前に、胸が躍る。