プロ野球亭日乗BACK NUMBER
“頑固”が支えたプロ生活20年――。
松井秀喜が最後まで貫いた己の美学。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byAP/AFLO
posted2012/12/29 08:02
引退記者会見では、「『引退』という言葉は使いたくないですね」「もう少しいい選手になれたかもね」とコメントした。
フロリダで10代の若者達に交じって最後まで戦い続けた。
「僕のバッティングの原点はすべて長嶋監督とやってきた素振りにある。プロ1年目からメジャーに渡ってプレーする間も、実はやっていること、目指しているものに変わりはないんです」
こんな話をしていたのは今年の6月、タンパベイ・レイズとマイナー契約を交わして、フロリダの施設でトレーニングをしていたときだった。
10代の若者たちに交じって、ラストチャンスにかけて汗を流したあのときも、ホテルの自室に戻ると、バットを手にしていた。
愚直だが、そうして自分のスタイルを貫き通してきた。その頑固さが松井秀喜というスーパースターを支え、グラウンドでの華々しい活躍につながっていったわけである。
引退会見を観て、まだまだできるのではないかという思いもよぎる。ただ、松井秀喜が描く松井秀喜であるためには、ここでバットを置くことが最善だと判断し、決断したのだろうとも思った。
余力を残したまま自分のスタイルを貫き通した。
松井らしい引き際だった。