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レギュラー復帰も手放しでは喜べず?
長谷部誠がはまり込んだ“袋小路”。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2012/12/06 10:30
2日のHSV戦ではポラークとボランチでコンビを組む。守備で奮闘したものの、アピールしたい攻撃面では目立つ場面もなく、引き分けに終わる残念な結果に。
レギュラーとして活躍すれば、移籍はますます困難に。
また、1月からは現在のケストナー暫定監督に代わって、ヴォルフスブルクが新たな監督を招聘する可能性も高い。11月にGMに就任したアロフス氏がその準備を進めていると見られている。監督が代われば、起用される選手の顔触れにも変化が見られるだろう。
ただし……。
ポジションはどうであれ、監督が誰であれ、長谷部が現在のように絶対的なレギュラーとして活躍すればするほど、チームからすれば手放しがたい存在になっていく。例えば、11月28日のボルシアMG戦では、長谷部は右MFとしてスタートして、試合中にボランチ、右SBと計3つのポジションでプレーすることになった。そんな貴重な存在を誰が喜んで送り出すだろうか。
だが、ヴォルフスブルクにとどまれば、このチームで長谷部は齢を重ねていくことになる。積み上げた年齢、経験は選手にとって勲章だが、移籍“市場”ではマイナス要因として評価されることもある。だから、いまの長谷部が実は袋小路に入り込んでいるようにも見えるのだ。
袋小路に入り込んだ長谷部は、状況を変えられるのか?
長谷部はこの冬については明言を避けている。
「それはわからない、今はね。今は何も言うことがない、今は」
でも、と切り出してから、こう話した。
「今、やることは自分が良いプレーをすることしかない。後先のことを考えて、手を抜くなんて、そんなことは出来ないからね。今をしっかりやらなきゃいけない。それだけです」
今の活躍を見れば、ヴォルフスブルクが長谷部を手放したくないと考えていても不思議ではない。でも、さらに活躍を重ねれば、いくら移籍金を払っても長谷部を獲得したいと考えるクラブが出てくるかもしれない。将来を決めるのは長谷部の意志である一方、周囲の動き方、考え方次第によるところも大きいのだ。この複雑に入り組んだ状況を変える鍵は“運”なのかもしれない。
長谷部はベストセラーとなった自身の著書「心を整える。」で「さぼっていたら、運なんて来るわけがない」と記している。さらに「運を口説くことに関しては、とことんうまくなりたい」とも。
真摯なプレーを続ける長谷部はこの冬、運を口説けるだろうか。