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高校教師・山本健一 「先生は世界一のトレイルランナー!? トレーニングは授業と部活で」
text by
山田洋Hiroshi Yamada
photograph byMami Yamada
posted2012/11/09 06:01
楽しそうに仕事をしていた両親の影響で体育教師に。
「両親が二人とも高校の体育教師で、毎日楽しそうに仕事をしていたんです。その姿を見ていて、なんとなく高校生のときから体育教師になると決めていましたね」
学校で受け持つ授業は1日平均4コマ。マラソンが授業に加わる時期には、授業の時間だけで1日20kmほど走ることもあるという。授業で走り、部活でも走る。トレイルランナーとしては恵まれた職場環境だ。しかし、この環境をつくりあげるまでには苦労もあったという。
「赴任当初はバスケ部の顧問でした。もちろんバスケットも楽しかったけど、晴れた青空を見ると外に走りに行きたくて仕方がなかった。だから、山岳部を作らせてほしいと校長先生にお願いしたんです。『やらせてください!』って。もう気合いだけですね」
トレイルランナー山本健一は短命かも?
「走りたい!」という理想や目標が先にあり、それに環境を近づけていったのだ。もしかして野心家ですか? と尋ねると「そうかもしれないです」と言ってこう続けた。
「こうやりたい、と思ったことが思い通りになるまで粘る性格なんです。トレランのスタイルも同様に後半粘って、粘って。だけど、異動で学校が変わると今と同じようにできないかもしれません。もう8年もこの学校に在籍しているので、いつ異動があるかわからない。トレイルランナー山本健一は短命かもしれませんよ(笑)」
指導する山岳部は冬場、スキー部に変わる。これも彼が校長に頼み込んで実現したことだ。
「クロスカントリースキー部として12月中旬くらいから2月中旬くらいまで合宿と遠征生活に明け暮れる日々です。授業? 学校は公欠扱いになるんですよ」
2カ月間、生徒も顧問であるヤマケンも学校に行くことはほとんどなく、ひたすらクロスカントリーに励んで足腰を鍛える毎日だという。「授業は?」「それで大丈夫なんですか?」と驚く我々に「スキー部がある学校は冬は大会続きで学校には行けないんです」と話す。冬の合宿の間は生徒たちと一緒に練習するだけでなく、寝食もともにしていくそうだ。