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昨季の躍動は夢だったのか?
A・ビルバオの悲しいチーム事情。 

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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photograph byREUTERS/AFLO

posted2012/11/01 10:30

昨季の躍動は夢だったのか?A・ビルバオの悲しいチーム事情。<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

今季まだ本調子でないFWジョレンテと悩める指揮官のビエルサ。

移籍が認められなかったジョレンテは心ここにあらず。

 たとえ選手本人が望んでも、契約解除に必要な違約金を全額支払わない限り移籍交渉には応じない。そんなウルティア会長の強硬な姿勢により、対照的な結末を迎えたハビ・マルティネスとフェルナンド・ジョレンテの移籍騒動もチームにネガティブな影響をもたらした。

 ピボーテ、センターバックの両ポジションでチームを支えてきたハビ・マルティネスのバイエルン・ミュンヘンへの放出は、4000万ユーロの利益と引き換えに、チームの攻守バランスを大きく狂わせた。超攻撃的なプレースタイルに潜む守備面のリスクを補っていた彼を失ったことで、チームは開幕2試合で喫した9失点を皮切りに9節終了時点でリーグワースト3位の19失点を献上している。

 そして来年6月で満了となる契約延長のオファーを断ったにもかかわらず、クラブが移籍を認めなかったジョレンテの残留も厄介な火種となっている。

 ファンから「裏切り者」と野次られて心を痛めた彼は、残留が決まった後もケガで出遅れるなど心ここにあらず。復帰後もやる気のないプレー態度から、監督により「帰ってよい。君の仕事は終わった」と練習途中で帰宅を命じられるなど、チームの不振を象徴するような存在となっている。

主力の約半数を欠く状況で、昨季の強さは影を潜めた。

 さらには並行してフェルナンド・アモレビエタ、ジョン・アウルテネチェ、アンデル・エレーラらの負傷離脱が相次いだため、チームは主力の約半数を欠く状況でシーズンの開幕を迎えた。ローテーションをほとんど行なわず、メンバーを固定してチームの熟成を進めてきたビエルサにとって、このような状況で持ち味の高い連動性を保つのは簡単なことではなかった。

 昨季見られた迷いなきプレーとは対照的に、今の彼らはミスを恐れ、失点を恐れ、自分達のサッカーに確信を持てぬままプレーしているように見える。ミスを恐れず前へ前へと突き進む推進力、後半ロスタイムでも数十mを全力疾走できる驚異の運動量、マンチェスター・ユナイテッドら強豪相手にも怯むことなく、あくまでも自分達が主導権を握ることにこだわった横柄なまでの負けん気の強さ。そういった昨季は見られた彼らの強さは、今やすっかり影を潜めてしまっている。

 8節バレンシア戦ではそれまでスコア、内容共にリードしていたチームがアンデル・エレーラの退場を境に一変し、ゲーム終盤に2失点を喫して逆転負けした。このような精神的な弱さは、昨季はまず見られなかったものだ。

【次ページ】 メディアに“暴露”された選手に向けたビエルサの演説。

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