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ストレート勝負の本格派に変身中!
松坂大輔は魅力的な“悪女”である。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byKYODO

posted2010/06/13 08:00

ストレート勝負の本格派に変身中!松坂大輔は魅力的な“悪女”である。<Number Web> photograph by KYODO

日米通算150勝についてイチローが「遅いでしょ」とコメントしたことに対して、「僕もそう思う。自分が思っていたより2年くらい遅いですから」と答えた松坂

投げる球は自分が決める! 松坂は急速に変身中。

 メジャーリーグでは配球の最終決定権は投手が持っている。日本では捕手が「リードする」という言葉からも捕手の比重が高いが、メジャーの投手は自分のパターンを確立してマイナーから勝ちあがってきた選手が多いから、最後の最後は投手が決める。

 松坂はこれまで女房役のバリテックのサインに素直にうなずくタイプだったと思う。しかし今季、ストレートの割合が増えたのは、速球中心の組み立てを意図しているからだと推測される。

 自分自身で変わろうとしているのだ。そこには並々ならぬ覚悟が感じられる。

 今季も負け試合は、四球で自滅してしまっている印象を受けるが、9イニングあたりの四球の数(BB/9)は2008年の5.05個と比べると、現在のところ4.22にまで減少している。

 シーズン   BB/9 
 2007年   3.52 
 2008年   5.05 
 2009年   4.55 
 2010年   4.22 

 これはストレートを増やしている効果だと推測できる。

 5月27日のロイヤルズ戦では8四球と散々な出来だったが、6月に入ってから四球の数は2試合で2個だけ。

ストレートの相棒としてカッターを多用する。

 印象的だったのは、6月7日のインディアンズ戦ではスライダーをほとんど封印し、ストレートの相棒としてカッターを多めに使っていたことだ。試合後、松坂は、

「インディアンズの打者はローボール・ヒッターが多い。スライダーが狙われる可能性があるので、スライダーよりもコース、高低ともコントロールをつけやすいカッターを多めに投げました」

 とコメントしており、制球をかなり意識していることをうかがわせた。

 ただし、それが慎重になっているというわけではなく、思い切り腕を振ってストレートを軸に配球を組み立てているところに、今季の松坂の魅力があるのだ。

 本音をいうと、今季の松坂にはなんとしても成功してもらいたい。期待されてレッドソックスに入団したが、正直なところ、コストに見合う活躍はしていないと見られている。

 変身中の今季、内容のある10勝以上の投球を見たいのだ。

 たしかに変わろうと意志が感じられるし、コーナーにストライクが決まっているときは打たれる感じがしない。

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松坂大輔
ボストン・レッドソックス

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