プレミアリーグの時間BACK NUMBER
早くも'14年W杯の優勝は諦めムード?
ホジソン率いるイングランドの憂鬱。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2012/10/24 10:31
ジェラードが出場停止だったサンマリノ戦でキャプテンマークを巻いたルーニー。ジェラードが代表を引退すれば、「次のキャプテンはルーニー」だとホジソン監督も発表している。
ルーニーは、左サイドでの守備に追われる展開に……。
逆サイドには、トム・クレバリーが使われた。クレバリーは、ホジソンの下で、ボランチとトップ下も経験している23歳。若手の積極登用を歓迎することもできるが、ポーランド戦での左ウィング起用は、豊富な運動量による守備面での貢献に期待した、受け身の策に他ならない。イングランドのラインは低く、みすみすポーランドに主導権を譲ることになった。2列目右サイドのカミル・グロシツキによる突破と、右SBルカシュ・ピシュチェクのオーバーラップに苦しむはめになり、トップ下のルーニーは、最終的に4-5-1の2列目左サイドで、対ピシュチェクの守備を任される始末。1トップのジャーメイン・デフォーは、全くの孤立状態だった。
デフォーの先発には、若返りを推し進める勇気に欠ける一面も窺えた。ベンチには、経験値では劣るが、直前のサンマリノ戦で2得点のダニー・ウェルベックがいた。決定力でもデフォーが上だが、豪雨で試合が1日延期された重いピッチと、引いた自軍の陣形を考えれば、長身の21歳を最前線に配する手はあった。小柄な30歳は、オレンジ色の目立つスパイクを履いていても、ロングボールの標的にはならなかった。
テリー&ファーディナンドと新センターバックコンビの違いとは?
経験値への依存と言えば、ホジソンは、34歳のフランク・ランパードと、31歳のジョン・テリーも、ポーランド戦で先発させたかったに違いない。怪我で欠場したランパードは、ウクライナ戦でもスティーブン・ジェラードと中央でコンビを組んでいた。
また、去る9月23日、指揮官は、最終ラインの要と信頼していたテリーが決意した、人種差別発言疑惑に端を発する代表引退を渋々受け入れたとされる。次世代のCB候補には、長期欠場中のクリス・スモーリングとフィル・ジョーンズがいるが、マンチェスター・ユナイテッドの両者は、クラブでSB起用が増えていたこともあり、怪我が癒えても、指揮官は起用に二の足を踏むと思われる。
テリーが去った後、初の実力テストと目されたポーランド戦では、ジョレオン・レスコットとフィル・ジャギエルカが4バックの中央でコンビを組んだ。往年のテリー&リオ・ファーディナンドとの最大の差は、奪った後のボールの処理。レスコットとジャギエルカは、先代ペアとは違ってフィードが苦手だ。手前のMF陣は、最終ライン近くまで下がってボールを受け取らなければならなかった。加えて、元々、中盤でもポゼッションを放棄する悪癖があるのだから、マイボールとなったところで、攻撃はなかなか形にならない。