欧州サムライ戦記BACK NUMBER
プレミア開幕3連敗のサウサンプトン。
李忠成と吉田麻也が握る浮沈のカギ。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byPress Association/AFLO
posted2012/09/07 10:31
第3節のマンチェスター・ユナイテッド戦、今季初めてベンチ入りした李忠成だったが、出場することはなくチームは2-3と敗れた。右足骨折が完全に回復し、吉田麻也と共にプレミアのピッチを駆け巡る日が待たれる。
李はチームメイトとのポジション争いを勝ち抜けるか。
更に、クラブ史上最高の移籍金1200万ポンド(約15億円)で実現した、ガストン・ラミレスの加入が前線の選択肢を増すことになる。ウィンガーとしても起用できるラミレスだが、トッテナムとリバプールも興味を示した攻撃センスが最大限に発揮されるのは、インサイドでのプレーメイカー役だろう。アドキンスは、オプションとして4-3-2-1と4-2-3-1をプレシーズンに試している。ラミレスをトップ下で生かすとすれば、2列目の「2」または「3」の一角は、李を含むFW陣の他、アダム・ララーナ、ジェイソン・パンチョン、スティーブン・デイビスの攻撃的MF3名も候補となる。
ララーナは、昨季リーグ戦で11ゴール11アシストを記録した昇格の立役者だ。左サイドで先発した先のマンU戦(2-3)でも、チーム内最高の出来を見せた。マンUから奪った先制点は、香川のロストボールに始まったカウンターで、パスを受けたデイビスがタイミング良く右サイドに振り、パンチョンがファーサイドに送ったクロスから生まれている。
李は、競争相手に勝るとも劣らぬ運動量と、昨季の移籍後初ゴールでも披露した、エリア外からもネットを揺らすパワーとテクニックで、アピールを重ねるしかない。今季初の一軍戦となった8月28日のリーグカップ戦(4-1)では、控え組イレブンで3部リーグ勢との対戦だったとはいえ、フルタイムをこなして先制点も決めた。カップ戦での起用を「リハビリの一環」と言っていた指揮官は、コンディション十分と判断すれば、リーグ戦でも、ほどなくして李にチャンスを与えるはずだ。
冷静なボール捌きが持ち味の吉田はフィジカル面が課題。
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マンU相手の終盤には、攻撃要員3名が投入された。後半も残り15分を切り、2対1でリード。17歳のセンターハーフ、ジェイムズ・ウォード・プラウズが疲労困憊だっただけに、守備を固める策もあったが、指揮官は「前線にエネルギーを注入したかった」のだという。本来であれば、その1人として李がベンチを出ていただろう。
そのアドキンスは、「安心してボールを持てるCBだ」と、吉田を評している。攻撃面でのフィードと、守備面での冷静なボール捌きへの期待が窺える発言だ。もちろん、その持ち味を発揮するためには、フィジカルで負けないことが大前提となる。母国では「日本人離れしている」と言われる189センチの身長も、欧州のピッチ上では特筆すべき高さではない。むしろ、線の細さを指摘されかねない。プレミアで「エレガント」と形容されるCBの代表格には、マンUのリオ・ファーディナンドがいるが、フィジカル色の薄いファーディナンドでさえ、身長は吉田と同じでも、体重は数キロ重いのだ。