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<悔恨の五輪、ドイツで雪辱を> 酒井宏樹 「僕にとってはここが一番のビッグなチーム」
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byItaru Chiba
posted2012/09/08 08:01
監督の戦術も理解し、クラブからの期待も高い。
だがブラジル留学、五輪での怪我と、若くして
苦労を知る22歳は、決して浮わついてなどなかった。
だがブラジル留学、五輪での怪我と、若くして
苦労を知る22歳は、決して浮わついてなどなかった。
ロンドン五輪からハノーファーに戻って約1週間後、酒井宏樹がホテルでリラックスしていると、突然、携帯電話が鳴った。登録されている番号ではない。いったい誰だ?
電話の主は、日本代表キャプテンの長谷部誠だった。
「長谷部だけど、明日ハノーファーに行くから、時間があったらメシでも食べない?」
代表の大先輩の誘いを断れるはずがない。酒井は即答した。
「ハイ、行きます!」
酒井は額の汗をぬぐいながら、その電話のやりとりを振り返った。
「誰だよって思ったら、ハセさんで(笑)。日本代表って先輩はみんな優しいですし、ピッチでは年齢なんて関係ないですけど、やっぱり縦社会と言えば縦社会。そこは暗黙の了解ですよね」
ヴォルフスブルクからハノーファーは車で約100kmの距離で、ドイツの感覚ではご近所さんだ。長谷部は以前からハノーファーで英会話の授業を受けていた。今回、その授業のついでに後輩を食事に誘ったのだ。
キャプテンとの初の食事会は、スペイン料理屋。さすがはドイツ6シーズン目の先駆者、いろいろとアドバイスを送ってくれた。
「ハセさんはおいしいレストランを教えてくれました。英語の勉強も勧めてくれて。あとは札幌であった日本対ベネズエラ戦の報告。僕は行ってないので、雰囲気を聞きたかったんです」